トランプ氏「移民のせいで犯罪が増加している」→司会者「FBIによれば凶悪犯罪は減っている」→トランプ氏「FBIが間違ってる」→ハリス氏「必要なのは未来に向かって進むこと」…討論会を分析
11月のアメリカ大統領選に向けたハリス氏とトランプ氏によるテレビ討論会が行われた。投票日まで2カ月を切り、選挙戦にどのような影響を与えるのか。ANNワシントン支局の梶川幸司支局長に聞いた。 【映像】トランプ氏がくらった強烈なカウンターとは? ━━討論会全体を通してどんな印象を受けたか? 「ハリス氏とトランプ氏は対面すること自体が初めてだったが、初の直接対決はハリス氏が予想以上に優位な展開を示したと言える。CNNが発表した世論調査によると『討論会の勝者はハリス氏』と答えた人が63%(トランプ氏が37%)という結果に。私も見ていて『攻めるハリス氏、冴えないトランプ氏』という印象を受けた。ハリス氏の入念な準備と作戦が功を奏したのではないか」 ━━テレビ討論会は全米に生中継されたのか? 「その通りだ。そして、討論の内容だけでなく、候補者の表情や話し方、仕草といった“印象”も選挙で投票する際の大きな判断材料となる。その影響力は大きく、6月の討論会ではバイデン氏が受け答えで精細さを欠き、選挙戦から撤退する事態に発展した。そうした『見え方』が選挙戦に大きな影響を与えることにもつながり、歴史を変えることもある」 ━━討論会で、ハリス氏とトランプ氏はどのような様子だったのか? 「対照的だった。ハリス氏は時に笑ったり、時ににらみつけたり、トランプ氏が話す時はそちらを向いたりと、実に表情豊かだったが、トランプ氏は司会者を向いて話すことが専らで、一貫して不機嫌なようにも見えた。また、ハリス氏はトランプ氏の挑発に乗らず比較的落ち着いて討論を進めたのに対して、逆にトランプ氏は挑発に乗って早口で捲し立てる場面もあった」
━━「経済・インフレ」についてはどのような議論がされたのか? 「ハリス氏の主張は中間層を底上げするというもので、住宅購入の頭金を補助したり、子育て世帯に減税するというものだ。一方、トランプ氏は企業の減税を続けたり、海外からの輸入品の関税を引き上げることでアメリカを復活するとしていて、現在のインフレはバイデン政権の副大統領であるハリス氏の責任だと主張した。討論では、ハリス氏が『トランプ政権は大恐慌以来の失業率を残した。億万長者や大企業に減税して、中間層の負担を増やそうとしている』と批判。トランプ氏は『インフレで国を崩壊させたのはハリスのせいだ。この3年半何をしていたんだ』などと批判した。ただ、どちらも『相手にはプランがない』と言うばかりで、政策論争どころか、議論はほとんど深まらなかった。二人の経済政策は選挙向けという事情があるにしても、どちらも“人気取り”という側面が強く、実現性が乏しかったり、財政赤字を拡大させるとの指摘があって、注意して見ていく必要がある」