くず米から離乳食 安全安心売りに地産地消 広島の農家ら
農家の所得向上にも
ふるい下米(くず米)を使った離乳食と幼児食の販売が広島県内で始まった。安芸高田市で子どもを育てる女性農業者らで構成する一般社団法人KURU KURU(クルクル)が、無農薬・無化学肥料の米で離乳食専用の甘こうじを開発し、5月から本格販売。原料は県内農家から市場価格の3倍で買い取り、生産者の所得向上にもつなげる。 2023年6月に立ち上げた同法人は、無農薬・無化学肥料のふるい下米で離乳食と幼児食を開発する事業「Farm to baby」に取り組む。中山間地域の同市で子ども4人を育てながら、夫と一緒に水稲など9・3ヘクタールを栽培する法人代表の矢野智美さん(36)を中心に発案し、農家の所得向上を狙う。 第1弾として開発したのは、米こうじで作った甘こうじ「Baby Food+(プラス)」。生後9カ月~3歳が対象で、ビタミンや食物繊維など栄養素を手軽に補給したいというニーズに応えた。砂糖を使わず米本来の甘味やうま味成分で、乳幼児の味覚を育てる。 販路は、食の安全・安心が求められるベビーフード市場を開拓する。矢野さんは「消費者の入れ替わりが激しい市場で安定した販路を確保しながら、生産者が環境に優しい農法に転換できるよう後押ししたい」と話した。 原料のふるい下米は、事業に協力する県内の2団体9農家から買い取る。仕入れた米は愛知県のふるい下米専門の米卸売業者に選別・粉砕を委託する。ふるい下米で課題だった粒の大きさや乳白粒など品質のばらつきを克服。さらに、しょうゆこうじの製造を手がける広島県三次市の企業で、幼児が食べやすいよう細かいペースト状の甘こうじにする。 今年2月から5月上旬までテスト販売した200個は完売。子育て世代の20~40代から「時短しながら子どもの健康をサポートできる」と人気を集めた。5月下旬から同法人の電子商取引(EC)サイトやネット通販サイトのAmazonで、玄米と白米の2種類(1個200グラム、900円)の本格販売を始め、1カ月で100個を売り上げた。 24年度中に、ホットケーキミックスや米菓などの販売も予定する。矢野さんは「畑から赤ちゃんの成長を支え、消費者と生産者が協力する未来をつくっていきたい」と話した。 (西野大暉)
日本農業新聞