「風呂キャンセル界隈」は“ゴミ屋敷”の住人予備軍!? 支援難しい“セルフネグレクト”の実態
支援を拒否するセルフネグレクトの当事者たち
前述の通り「セルフネグレクト」は病気ではないため早い段階で外部に助けを求められれば、支援につながり本人の回復にも役立つ。しかし、当事者の多くが「人に迷惑をかけたくない」「自分の状態を人に知られたくない」と隠すという。その結果、孤独死に発展するケースも珍しくない。岸さんら研究チームが65歳以上の孤独死(孤立死)765事例を分析したデータでは、8割が生前にセルフネグレクトの状態にあったという結果が出ている。 「プライドや周囲への遠慮から、誰にも相談できない・しない人が多数いらっしゃいます。問題を自分で解決しようというタイプの方ほど、セルフネグレクトになりやすいです」 高齢者であれば、離れて暮らす家族や近隣住民からの要請で支援につなげられる。当事者が一人暮らしの場合、「地域包括支援センター」が相談や支援を担当していることが多い。地域包括支援センターとは、各市区町村による直接運営、もしくは自治体から委任された社会福祉法人や医療法人、民間企業などが運営する、高齢者を対象とした公的窓口だ。 だが、センターの職員や支援ボランティアが本人のもとを訪れても「ほっといてくれ」と追い返されてしまったり、置き手紙をしても連絡がこなかったりと、支援を拒まれてしまう現実がある。 「65歳未満の人向けには、生活困窮者支援や引きこもり支援、社会福祉協議会による相談窓口の開設など、“相談があれば対応します”という制度は存在します。でも、相談に来ない人がほとんどです。プライドの関係で相談に来られないだけでなく、そもそも情報にたどり着けない人もいる。窓口で待っているだけでなく、こちらからこちらから訪問するなど“アウトリーチ”する必要があります。ただ、訪ねて行っても今度は拒否されるという難しさもあり、そこが医療や福祉、行政側が直面している課題のひとつです」
セルフネグレクトの予防策は?
セルフネグレクトに陥ってしまうと、自分だけで元の生活に戻るのは難しい。まずセルフネグレクトを回避する方法はあるのだろうか。 「セルフネグレクトは自分では気づけないのが特徴のひとつですので、陥る一歩手前で気づけるかどうかが大切ですね。対策としては、“自分はこういう状態になったら危ない”というサインやバロメーターを持っておくといいかもしれません。水回りの汚れ具合や生ごみを溜めていないかなど、健康なときであれば『嫌だな』と思うポイントを知っておくといいですね。“好きなことができなくなる、したくなくなる”も危険サインのひとつです。 また、何かあったときに相談できる人を作っておいたり、相談できる機関を知っておくといいと思います。セルフネグレクト状態に陥ってからでは探すのも大変です。現状、そうした支援機関の存在について周知が足りていないので、広めていくことと、もっと気軽に話を聞いてもらえる場所を作ることが支援側に求められています」