『蛇にピアス』著者・金原ひとみさん(41歳)は17歳&13歳の母も「第二子で流産を経験後、自分が自分でなくなっていく感覚が…」|美ST
自分が親に言われた“つまらないこと”を言うようになっていた自分自身に愕然
娘たちも今や高校2年生と中学1年生になりましたが、最近ショックを受けたことがあります。自分が親から言われたことと全く同じようなことを長女に言っていたことに気づいてしまって。どんな感じのことか?「彼氏と泊まりなんてありえない、スカートが短すぎる!」みたいな感じのことです(笑)。私も昔似たようなことを親から言われ、「この人たちは何が楽しくて生きてるんだろう」と思っていたのですが…。いつの間にこんなに凝り固まって、人と、ましてや自分の親と同じことしか言えないだなんて。母親としての顔や責任があるとはいえ、自分にがっかりしました。 彼女達が小さい頃は何をするにも私がいなければならず、人生に完全に付属した存在でした。今では成長し自己主張もするようになりましたが、今の若者はとても平和主義だと感じます。人を傷つけたり、ショックを与えたり感情的になることを極度に嫌うんですね。私は過剰というか、自分が納得いくまで言葉を重ねるので時として相手を言葉で叩きのめしてしまうことがあって、娘達世代にとってそれは犯罪的なまでに暴力的で野蛮なことに見えるようで。実際、娘達と言い争いになりそうになると、彼女達はスッと引きます。「今は話し合う時じゃない」と。でも私は話さないと気が済まなくて尚も理詰めで言うと、「そういうの良くないよ。もう話したくない」となる。さすがに私も反省して「気をつけます……」と改めるのですが、娘達に指摘されなかったらそれこそ老害になっていたかもしれません。 私のさらに上の世代などは、もっと過激なコミュニケーションがあったはずで、グラデーションのようにだんだんマイルドになり、私の世代、娘達世代へと変遷を辿っているようです。そんな風に、お互いに合意を得たうえで平和に話し合って人間関係を構築していく娘達世代の姿勢から、自らを顧みたり新たな発見をすることは本当に多いと感じます。言葉遣いも常に変化しているし、『腹を空かせた勇者ども』では娘達世代を主人公に据えましたが、やはり身近に若者がいるからこそ書けた小説です。それまでに書いた小説の登場人物達とは共に生涯苦しむ覚悟を持ってきましたが、前述の作品での登場人物達は私を置いて勝手に幸せになってもらいたい、とすら思いました。同様に娘達も、「こんな母親もいたな」と思いながら巣立って欲しいと思っています。