実は日本が世界でダントツの「ギャンブル・マシン天国」だという「衝撃の真実」
ふつうに生きていたら転落するーー! あまりに残酷な「無理ゲー社会」を生き延びるための「たった一つの生存戦略」とは? 【写真】実は日本が世界でダントツの「ギャンブル・マシン天国」だという衝撃の真実 作家の橘玲氏が、ますます難易度の上がっていく人生を攻略するために「残酷な世界をハックする=裏道を行く方法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は橘玲『裏道を行け』(講談社現代新書、2021年)から抜粋・編集したものです。
デザインされた依存症
文化人類学者でニューヨーク大学メディア文化コミュニケーション学科准教授のナターシャ・ダウ・シュールは、「1990年代初頭のラスベガスにおけるカジノのデザインおよび経営」をテーマにカリフォルニア大学バークレー校で博士論文を書いてから、およそ20年かけて“Addiction by Design; Machine Gambling in Las Vegas(デザインされた依存症 ラスベガスのマシン・ギャンブリング)”を世に問うた。 ラスベガスのカジノというと、わたしたちはルーレットやブラックジャック、バカラなどのテーブルゲームを思い浮かべる。だが2000年代に入って以降、カジノの収益の大半は「マシン・ギャンブリング」からもたらされており、その一方で深刻な社会問題を引き起こすようになった。 シュールは冒頭で、モリーというギャンブル依存症の女性を紹介する。 モリーは1980年代に3番目の夫とともにラスベガスに移り住み、ポータブルゲーム機のビデオ・ポーカーを夫に教えられた。 そこから本格的なマシンに進み、週末にカジノで少しずつビデオ・ポーカーをしているうちにそれが何時間にも及び、やがて何日も入り浸るようになった。 プレイするたびに金遣いは荒くなって、やがて2日で給料全額を注ぎ込み、プレイする金ほしさに生命保険を解約して現金化してしまった。 シュールが「大勝ちしたかったのか」と訊くと、モリーは短い笑い声をあげ、こうこたえた。 「初めのころは勝とうっていう意気込みがあったけれど、賭けつづけていくうちに、自分にどの程度勝算があるかわかるようになったから。ただ、賢くはなっても、それまでより弱くもなって、やめることができなくなっていました。 今では勝ったら──ええ、勝つことだってありますよ、ときどきは──勝ったぶんをそのままマシンにつっこむだけ。人からは理解されないんですが、私は勝とうとしてプレイしてるんじゃないんです」 だったら、モリーはなんのためにギャンブルをしているのか? 「プレイしつづけるため──ほかのいっさいがどうでもよくなるハマった状態、〈マシン・ゾーン〉にいつづけるためです」と彼女は答えた。