被災住宅どう直す?住人を悩ます再建問題 能登地震5カ月、ボランティア建築士の各戸訪問相談に記者が同行
▽「自宅か、亡くなった両親の家か」どちらを修繕するか悩む被災者 3軒目は輪島市の山あいにある三井地区の民家を訪れた。住人の男性(74)は「中規模半壊」と判定された自宅か、亡くなった両親が生活しており今回「半壊」判定を受けた空き家のどちらを修理するかを悩んでいた。 男性は住宅を解体して支援金をもらい、空き家の修繕費用に充てようと考えていたが、山本さんは「空き家は基礎や壁の損傷が大きく修繕には1千万円はかかる」と分析。自宅と空き家の双方を調べた結果、基礎や外壁の損傷が少ない自宅を修繕する方が費用は少なくて済むと説明した。男性は「具体的にかかる費用が分かってよかった」と話した。 この日に予定していた相談が全部終わったのは午後4時過ぎだった。金沢から通っている山本さんは帰りの渋滞に巻き込まれないよう足早に帰路についた。昼食は相談先でもらったおにぎりだけ。時間をかけて確認や相談に応じるため「こなせる数には限界がある」という。
▽「正しく恐れ、安心する一助に」 プロンティアネットに寄せられる相談は多種多様だ。当初は「解体前に家財を運び出したいが、中に入っても大丈夫なのか」「このまま住んで危なくないのか」といった安全面に関する内容が多かった。 メンバーの西和人さん(42)は、1人暮らしの高齢女性がある家で、建物の倒壊におびえながら震えるように生活していた姿が忘れられないという。実際に家を確認したところ、状態はそこまでひどくなかったといい、「被害に応じて正しく恐れ、正しく安心するための一助になりたい」と話す。 地震から3カ月ほどたつと、問い合わせは「家屋調査の結果は妥当か」、「2次、3次の調査を申請するべきか」といった内容や、「どう直せばいいのか」などの質問に変わってきた。それでも「病気で言うとまだまだ初診のような対応がほとんどだ」とメンバーの岡佑亮さん(35)は感じている。工具を持ち歩き、外れそうな梁や柱、階段の固定などの応急処置をその場で行うこともあるという。