第93回選抜高校野球 仙台育英、接戦制す 継投で1点守り切る /宮城
<センバツ高校野球> 帰ってきた球春、6年越しの勝利――。第93回選抜高校野球大会第1日の19日第2試合で、2年連続14回目出場の仙台育英は明徳義塾(高知)との初戦を接戦の末に制した。四国王者の好守に何度も得点を阻まれたが、序盤に挙げた1点を継投で守り切り、センバツでは6年ぶりの白星を挙げた。2回戦は、第6日(24日)第2試合で神戸国際大付(兵庫)と対戦する。【面川美栄】 先発のマウンドに上がったのは古川(2年)。背番号11の左腕は聖地初登板ながら、明徳義塾の打線を3者凡退に抑え、危なげない立ち上がりだった。 二回、5番の秋山(3年)が内野安打で出塁すると、続く打席で遠藤(2年)が左前に適時打を放つ。「(甲子園は)小さいときの夢だったので、素直にうれしかった」という公式戦初打席の一打が均衡を破り、スタンドは拍手に包まれた。 好投を続けた古川だったが、四回に2死一、三塁のピンチを招き、マウンドを主戦の伊藤(3年)に譲る。「全集中して投げた」という1球目は145キロ。気迫のこもった投球で三振に打ち取った。伊藤の母、優子さん(46)は「絶対抑えられると思っていたので、心配はなかった」と大きな拍手を送った。 仙台育英打線は六回に1死満塁の好機を作るなど試合を通して10安打を放ったが、明徳義塾の主戦・代木(3年)の好投や野手陣の堅守に阻まれ、あと1本が出なかった。 しかし、伊藤も相手打者に安打を許さず、九回2死一塁で打席に立った代木を二飛に打ち取りゲームセット。スタンドの応援団はメガホンをたたきながら勝利の喜びを分かち合った。系列校の秀光中軟式野球部主将の斉藤大葵さん(14)は先輩たちのプレーを見て「手が痛くなるほど応援した。自分も人の心を動かすプレーをしたい」と目を輝かせた。 伊藤は甲子園で初の勝ち投手に。2019年夏の甲子園で先発した試合で大敗した苦い経験を晴らすべく、前日に家族へ「勝負しにいってくる」とメッセージを送って臨んだ。「しっかり投げ切れたのは今日が初めて」と喜びつつも「悪かった点をしっかり反省して次の試合に臨みたい」と気を引き締めた。 ◇声援、鈴の音に込め ○…「コロナ禍なので、声を出さなくても、応援を活気づけられたら」。チアリーディング部の部員たちが手に持っていたのは、地元の女性ファンから贈られた手作りの鈴入りのボールだ。スクールカラーの黄色と青色の厚紙で編まれており、ボールを振ると鈴が「チリン、チリン」と鳴る。気持ちがこもった贈り物を渡された際、部員は「すごく可愛い」と喜んだという。3年の佐藤あみ部長(17)は「甲子園に来られない人の分まで、選手たちを応援したい。震災10年の節目の年に、東北勢初の優勝旗を持って帰れるよう、勝ち進んでほしい」と期待を込めた。【広瀬晃子】 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇執念実った決勝打 仙台育英・遠藤太胡外野手(2年) 二回裏1死二塁の場面で、決勝点となる適時打を放った。同級生の先発・古川が無失点に抑える姿に「何とか楽にしてあげよう」。強い打球を打つことを意識して打席に入り、2球目のスライダーをレフト前へ運んだ。 昨秋の県大会と東北大会でベンチ入りできなかったのが「野球人生で一番悔しかった」と話し、冬はウエートトレーニングに力を入れた。スクワットは130キロから210キロの重量でできるようになり、スイングスピードも150キロに上がった。「絶対に甲子園のベンチに入るんだという執念を一番感じた」と須江監督。初戦のスタメンに起用され、見事に期待に応えた。 山形県から甲子園に駆け付けた母・はるみさん(47)も、スタンドで「感動した」と大喜び。寮生活で息子の成長はなかなか見られない。前夜に、「試合に出ることになったら、粘り強く勝負強く、自分のスイングで頑張れ。初めての甲子園を楽しんで」とメッセージを送ったという。 冬場のトレーニングの成果を披露する「発表会」のつもりで楽しんだという夢の舞台。公式戦初打席ながら結果を残し、「小さい時からの夢がかなってうれしかった」と笑顔を浮かべた。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇選手宣誓全文 開会式での仙台育英・島貫丞主将(3年)の選手宣誓全文は次の通り。 ◇ 第93回選抜高校野球大会 選手宣誓 今日ここに、高校球児の憧れの舞台である甲子園が、戻ってきました。 この1年、日本や世界中に多くの困難があり、それぞれが大切な多くのものを失いました。 答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいことでした。 しかし、同時に多くのことを学びました。 当たり前だと思う日常は、誰かの努力や協力で成り立っているということです。 感謝 ありがとうございます。 これは出場校全ての選手、全国の高校球児のおもいです。 感動 喜びを分かち合える仲間とともに、甲子園で野球ができることに感動しています。 希望 失った過去を未来に求めて。希望を語り、実現する世の中に。 そして、この3月で東日本大震災から10年となりました。 日本、世界中に多くの協力や支援をいただき、仲間に支えられながら困難を乗り越え、10年前、あの日見た光景から想像できないほどの希望の未来に復興が進んでいます。 これからの10年。私たちが新しい日本の力になれるように、歩み続けます。 春はセンバツから。穏やかで鮮やかな春、そして1年となりますように。 2年分の甲子園。一投一打に多くのおもいを込めて、プレーすることを誓います。 令和3年3月19日 仙台育英学園高等学校 硬式野球部主将 島貫丞 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦第2試合 明徳義塾 000000000=0 01000000×=1 仙台育英