新1000円札の「北里柴三郎」が、旧札の「新渡戸稲造」に似ているという父。似てる人ってまぎらわしくないの? 肖像画の人物はどんな基準で選ばれる?
2024年に新紙幣が発行され、肖像画の顔ぶれが一新されました。ただ、一定以上の年代の人のなかには、新1000円札の「北里柴三郎」と、昔の5000円札の「新渡戸稲造」が似ていると感じる人もいるようです。丸いメガネ、口ひげ、恰幅のいい紳士といった顔の雰囲気が、「似ている」と感じさせているのかもしれません。 このように、昔のお札と混乱してしまうこともあるかもしれませんが、お札の肖像画として採用されている人たちはどのような基準で選ばれているのでしょうか。本記事では、お札の肖像画として採用される基準と、北里柴三郎、新渡戸稲造の両人はどのような功績を残した人物なのかについて解説していきます。 ▼実家の物置で「鳳凰」の描かれた100円玉を発見! 昔のお金は今も使える? 高く売れる場合もあるの?
お札の肖像画となる基準は?
お札の肖像画はどのように選ばれるのでしょうか。実はお札の肖像の選び方には、法令等で定められている明確な基準はありません。しかし、お札の様式については、財務省、日本銀行、国立印刷局の三者で協議し、最終的には日本銀行法に基づいて、財務大臣が決定することになっています。また、お札の肖像を選ぶうえでは、次のような点が考慮されています。 ●偽造防止の観点から、なるべく精密な写真を入手できること ●肖像彫刻の観点からみて、品格のある紙幣にふさわしい肖像であること ●肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること こうした観点から、現在のお札の肖像は、鮮明な写真がある明治以降の人物が選ばれやすくなっています。しかし、大正以降に生まれた人物はいまだ選ばれておらず、明治から大正にかけて活躍した人物に限定されると、その時代に流行った髪型やひげ、服装をしていることが多いので、異なる人でも「似ている」という印象を持ちやすいのかもしれません。
北里柴三郎ってどんな人?
北里柴三郎は「近代日本医学の父」とも呼ばれる、日本を代表する医学者で、細菌学の第一人者です。ドイツ人細菌学者ロベルト・コッホのもとで細菌学を学び、この分野では「破傷風菌」の純粋培養に世界で初めて成功しました。この研究によって破傷風の治療法は大きく飛躍したと言われています。 また、ペスト菌を発見し、その対策に尽力したことでも知られています。帰国後は、伝染病研究所(現在の東京大学医科学研究所)や北里研究所を設立し、日本の感染症における研究と公衆衛生の発展に貢献しました。北里柴三郎の研究は多くの命を救い、日本の医学を世界水準へと引き上げたのです。