親が認知症にならないか心配です。私が「後見人」になれば預金も引き出せますか?
高齢の親を持つ人のなかには、親が認知症になると預金が凍結されて、本人の生活費や医療費のためのお金さえ引き出すのが難しくなると知って、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。一度凍結された預金を引き出すには、成年後見人をつける必要があります。 それでは、家族が後見人になれば、自由に親の預金を出し入れできるようになるのでしょうか。本記事では、家族は後見人になれるのか、後見人になるために費用はどれくらいかかるのかを分かりやすくまとめました。
そもそも家族は後見人になれる?
成年後見制度とは、認知症や知的障害などの理由で判断力が十分でなく、財産管理やさまざまな契約などの法律行為を単独で行うのが難しい人を法的に保護して、意志決定の支援を行う制度です。成年後見制度のもと、被後見人の保護や支援を行う人を成年後見人と言います。 被後見人の家族が成年後見人になることは、ルール上可能です。成年後見人はどのように決まるのか、成年後見制度の2つの類型である「法定後見制度」「任意後見制度」それぞれについて解説します。 ■法定後見制度では家庭裁判所が成年後見人等を選任する 法定後見制度では、本人の判断能力の状態に応じて、権限の範囲が異なる「後見人」「保佐人」「補助人」のいずれか(以下成年後見人等)が選任されます。 成年後見人等は個別の事情に応じて家庭裁判所が選任します。家族が後見人に「なりたい」と言っても100%なれるとは限りません。家庭裁判所が最良だと判断すれば、弁護士や福祉の専門家などの第三者が成年後見人に選ばれることもあります。現に、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」によると、令和4年の制度利用件数のうち、8割以上で第三者が成年後見人等に選ばれています。 ただし、成年後見制度の利用を申し立てる際には、成年後見人等の候補者を指名可能です。家族・親族を候補者にしている場合にはその8割以上で家族・親族が成年後見人等に指名されています。 ■任意後見制度では家族を成年後見人に指名できるが後見監督人がつく 任意後見制度とは、本人の判断能力が正常なうちに契約書で後見人になる人(任意後見受任者)や後見人の権限の範囲を本人の意志で決めておき、本人の判断能力が失われたときに契約を発効する制度です。後見人を本人が指名できるため、家族を後見人にすることも可能です。 ただし、任意後見を開始するには、後見人が適切に業務を遂行しているかどうかを監督する、任意後見監督人を選任しなければなりません。任意後見監督人には家庭裁判所が選任した第三者がなるため、家族が後見人になったとしても、家族だけで自由に財産を管理できるのではない点に注意が必要です。