茂木健一郎「ストレス自体は決して悪いことだけではないのですが…」脳科学の視点でストレスとの向き合い方を解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「ストレスとの向き合い方」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
50代半ばで近頃は昔よりもいろいろ悩みが増え、ストレスを抱えることが多くなりました。 茂木さんは50代前半をどのように過ごしていましたか? また、どのようにストレスと付き合い、解消していましたか? どうか教えてください。
<茂木の回答>
茂木:脳科学の立場から言うと、ある特定の年齢にストレスが多くなるということはありません。ですが、人は人生において、会社や仕事、家族のことなどで変化が起きますよね。相談者さんの場合、50代になってからの変化というものが、たまたまストレスを抱えるきっかけとなることが多かったのかもしれませんね。 実は、ストレス自体は決して悪いことだけではないのです。頑張らなければいけないとき、自分を奮い立たせるといった、良いストレスもあります。ストレスというのは結局、脳が頑張ろうとしているので、それ自体は決して悪いことではありません。ただ、それが行き過ぎてしまうとバランスを崩したりします。 いろいろな課題に向き合う際、私自身が心がけていたのは「自分にとって大切なことは何か?」と見つめ直すことでした。たとえば、仕事が忙しくなった時期は、自分の科学者としての研究や教育などとのバランスに悩んだりしたこともありました。 人間関係なんかもそうで、困った人や面倒な人などに出会ったとき、たしかにストレスは溜まります。しかしながら、そのときも自分にとって大事なつながりとか、人間関係において大切にしていることを見つめ直すことによって、面倒くさいことが整理されていくのですよね。そこを乗り越えて、その向こうに行ったときは、さらに素敵な人生の道筋が見えてきたりします。 脳はある程度の記憶が側頭連合野に溜まったときに、それを整理することができます。整理するきっかけというのは、たとえばお散歩です。散歩するとデフォルトモードネットワークというのが活性化して、整理することができます。 あとは、ぼんやりすることも大事です。お風呂に入ったり、ゆっくり寝るのもいいですね。そういう形で記憶を整理すると、自分にとって大切にしていることが自然と見えてくると思います。自分の脳のなかを整理することを試みていただけたらなと思います。 (TOKYO FM「茂木健一郎のポジティブ脳教室」配信より)