秩父に佇む古民家カフェ、自然食と植物の魅力を――「お皿の上にお花畑を描こう!」
だんだん秋めいてきて、山登りもいい季節になりました。日帰りならば、秩父あたりもいいですね。秩父に行った際は素敵な古民家カフェにも寄ってみてはいかがでしょうか?
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。 秩父の代表的な山の一つに、武甲山があります。標高1,304メートル。日本武尊が、自らの甲を奉納したことから、その名が付いたと言われています。三角形の威厳ある姿をしていますが、良質な石灰岩が採れるため、セメントの原料として、北側の斜面では石灰岩の採掘が進み、年を追うごとに山の形が変わっています。
西武秩父線・横瀬駅で下車し、武甲山に向かって歩いていくとのどかな農村風景が広がります。しばらくすると道の脇に、ぽつんと置かれた手描きの小さな看板が目に入ります。 「Cafe なないろごはん 1分」 ちょっと寄ってみようかと、小道に入っていくと、古民家カフェ「なないろごはん」が見えてきます。ここでカフェとギャラリーを開いているのが、「ヨシさん」と呼ばれる今里佳子さんです。長崎県諫早市生まれのヨシさんは、53歳。 「ムツゴロウが棲む諫早湾が知られていますが、私が子供の頃は、父に連れられて、野山を駆け回って遊んでいましたね」 そんなヨシさんが20代のとき、原因不明の湿疹に悩まされ、体中の皮膚が荒れて、夜中も眠れないほどの痒みだったそうです。
ある日、友人の勧めで、玄米ごはんを中心に、季節の野菜や海藻を使った味噌汁、ひじきの煮物やきんぴらなどのおかず……、そんな自然食に切り替えると、少しずつ、体に変化が見られるようになり、5年ほどで湿疹がすっかり消えてしまいました。そのとき、ヨシさんは気付きます。 「そうか! 食べることで人はできているんだ」と。 自然食のおかけで、生まれ変わったような気持ちになったヨシさんは、自然食を極めてみたいと、オーストラリア、フランス、ニュージーランド、カンボジア、インドなど、現地の農家に滞在して、その国の伝統料理を学びました。そして「植物料理研究家」と名乗り、都内で自然食料理を提供するレストランと、料理サロンを始めました。「植物料理研究家」とは、ヨシさんが作った言葉です。 「季節の野菜や野草、お米に麦に豆、海藻、スパイスにハーブ、木の実やフルーツ、そして、ほとんどの調味料も植物からできています。お肉、魚介類、乳製品、卵以外は、毎日飲んでいるお茶やコーヒー、お酒まで、みんな、みんな、植物からできています。 “野菜嫌い”という人も、しっかり植物のお世話になっているんですよ。そんな植物の魅力を広めたくて、『植物料理研究家』と名乗っています」