「agnès b.」の魅力を徹底解剖 現役デザイナーのオフィススペース&アトリエへ足を踏み入れる
壁にランダムに貼られた古い写真や映画のポスター、それらに交ざって飾られたアート作品に、棚にはたくさんのアートブックと書籍、アナログのレコードプレイヤーが置かれている。
インダストリアルかつアーティスティックな風合いのアンティークのイスや家具、窓ガラスに描かれた白い鳥の絵。異なる時代とスタイルがミックスされていても、全てが調和し独特の雰囲気を醸し出していた。 さまざまな著名アーティストと伝説的な出会いをし、ブランドを代表するアイテムを数多く世に送り出してきたアニエス。アートに囲まれたこのスペースで、才能あふれる芸術家や音楽家たちと交流してきたのかと、想像を掻き立てる。
かつて彼女は、「アートと音楽が、人生において喜びと癒しを与えてくれた」と語っており、有名無名に関わらず、積極的に彼らをサポートしてきた。ブランドにとってアートは切っても切れない存在なのだ。 中で繋がっている隣の建物に、デザイナーやパタンナーが集結するオープンスペースのアトリエがある。
コレクション制作の出発点は、アニエスの頭の中にあるイメージ。彼女が口頭で説明したそのイメージを、企画チームが一つのコレクションとして組み立て、制作チームへと渡していく。 アナログ式に手描きされた大まかなコレクション内容が、デザイン画から型紙へと徐々にかたちになっていき、裁断から縫製へとプロセスを踏んでサンプルが出来上がる。
言葉にすると単純に聞こえるが、「agnès b.」のシンプルで上質な洋服は、極めて複雑な構成で成り立っている。 アトリエチームが作ったサンプルをアニエスが確認し、生地やボタン、シェイプからステッチ、裏地に至るまで最終決断を下す。 彼女のアイディアを反映させた、工場へと送られる建築設計図のような指示書には、ミリ単位でボタン位置やステッチの位置が記され、完成時のモチーフの見え方や、ネックラインの曲線の入り方まで一切の抜かりがない。