ミニの「FF」が時代を変えた 「RR」の牙城突き崩す
FF時代の到来
こうして1959年に登場したミニは世界中のエンジニアに多大な影響を与えた。フィアットの技師、ダンテ・ジアコーサもそのひとりである。ミニによって証明された小型大衆車とFFパッケージのマッチングの良さをに着目したジアコーサは、トランスミッションをエンジンの下ではなく、横に配置した。これは現在まで続くFFレイアウトの最適解である。 最適解が見つかれば、クルマのパッケージはさらに進化する。実用的なCセグメントの世界で、FFのパッケージ効率に新世界を開き、世界の大衆車を変えたのはジョルジェット・ジウジアーロのフォルクスワーゲン・ゴルフである。ゴルフではFFの効率パッケージに合わせたアップライトに人を座らせた乗車状態でのクルマのパッケージを根本的に見直し、これを手本として以後のFF車は作られていったのである。現在の自動車にとってはFFは極めてロジカルな意味を持つ駆動方式なのだ。 以上が、技術史から見た変遷なのだが、一つ重要な視点が抜けている。それはミニが何故そんなに効率的なパッケージを追求したのか、そしてゴルフが何故新たな時代のクルマとして世界から受け入れられたのかだ。世界経済と密接に関係したその出来事はエジプトのスエズで起こる。その話は次回に書きたいと思う。 (池田直渡・モータージャーナル)