ピーター・ティールが年初来で10億ドルの「パランティア株」売却
パランティアの共同創業者で主要投資家のピーター・ティールが、9月24日から26日にかけて約1600万株のパランティア株を売却し、約6億ドル(約853億円)を入手したことが米証券取引委員会(SEC)への提出書類で分かった。この取引により、推定保有資産が約98億ドル(約1兆4000億円)とされるティールが2024年に売却した同社株の総額は10億ドル(約1424億円)を突破した。 パランティア株は、23日からS&P500種株価指数の構成銘柄としての取引が開始されたが、ティールによる今回の売却は、その翌日から始まった。現在の株価は1年前と比べ約150%高の37ドル付近に達している。 パランティアの現在の時価総額は820億ドル(約11兆7000億円)で、売上高に対する時価総額の倍率を示すPSRは35倍と、S&P500の構成銘柄の中で最も高い倍率に達している。同社は、企業のデータ収集や分析、管理を支援しており、米軍との長年の関係で知られている。パランティアの2024年6月までの1年間の収益は25億ドル(約3562億円)で、その50%以上が政府顧客からのものだった。 同社の株価は、人工知能(AI)への期待に後押しされてここ1年で上昇したが、ティールは、パランティア株が39ドルをつけた2021年1月にも同社株を売却し、2020年末の新規株式公開(IPO)の直後にも売却していた。ティールは、他の多くのビリオネアと同様に2022年の市場の低迷期や2023年の反発時には株を売却しなかった。 2003年にパランティアを共同創業したティールは、現在もなお同社の発行株式の約5%にあたる1億1000万株を保有している。この保有株の多くは、ティールがパートナーを務めるベンチャーキャピタルのファウンダーズ・ファンドからの投資を通じてティールにもたらされた。ファウンダーズ・ファンド自体は、パランティアの持ち分をほぼ完全に手放した模様で、それらの株をティールを含む投資家に分配した。 ■事前の「取引計画」の一環 ティールによる最近のパランティア株の売却は、5月にSECに提出された2025年末までに最大2860万株を売却するという内容の取引計画の一環だ。そのため、ティールはこの期限までに、さらに1200万株以上を売却する可能性がある。事前に提出されたこの取引計画は、ターゲット価格などの特定の条件に基づいて自動的に売却が行われるもので、インサイダー取引に対する「積極的な防御」として意図されている。このため、直近のパランティアの株価の上昇がこの取引計画の価格目標の一つを満たし、大規模な売却につながった可能性がある。 ただし、取引計画は年に複数回提出されることが多く、インサイダーは、市場の状況に合わせて取引のタイミングを調整することができる。また、計画の提出から最初の売却までには90日間の「クーリングオフ」期間が設けられている。ティールの前回の計画は2023年12月に提出され、2000万株の売却条件が設定されていたが、その全てが今年5月までに売却された。 パランティアの共同創業者で同社株の2%を保有するCEOのアレックス・カープも、ティールと同様に自身の持ち株のほぼ全ての4900万株を、取引計画に基づき売却している(彼には、現状では行使できない株式オプションも多数ある)。推定保有資産が41億ドル(約5841億円)のカープは今月、2億3000万ドル相当のパランティア株を売却した。彼の前回の大規模な売却も、ティールと同じ2021年に行われており、8億5000万ドル相当を売却していた。
Phoebe Liu