米大統領選は終わったのに…バイデン大統領が日本製鉄のUSスチール買収「阻止」のナゼ
11日朝方、米国発で飛び込んできたニュースに石破首相も青ざめたのでは──。 日本製鉄による米鉄鋼大手「USスチール」の買収計画について、米ブルームバーグ通信が「バイデン大統領が安全保障上の懸念から買収を阻止する方針を固めた」と報じたのだ。買収は対米外国投資委員会(CFIUS)が安保上の観点から審査中。遅くとも23日までに審査内容を報告する見通しで、バイデンは月内に最終判断するという。 【写真】日本製鉄USスチール買収難航で…橋本英二会長「財界総理」の座はどうなる? この報道を受け、日鉄は「あらゆる手段を検討する」とコメント。訴訟も辞さない構えだが、既にトランプ次期大統領も今月2日にSNSで「反対」を表明済みだ。買収の実現はますます厳しくなってきた。 日本国内にはこれまで、「バイデン大統領とハリス副大統領が反対するのは選挙対策」という“楽観論”があった。 USスチールの買収問題は米大統領選で政治問題化。同社の本社が激戦州のペンシルベニア州にあるうえ、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明し、トランプもバイデンもハリスも、選挙戦で「買収阻止」を主張していた。しかし、選挙が終わり、バイデン政権中にCFIUSの結論が出ればなんとかなるという期待感があり、日鉄の森副会長は先月の記者会見で「大統領選挙も終わったことで、冷静な議論ができるようになった。現政権の中で年末までに判断されると思っている」と話していた。 石破も先月、バイデンに買収の承認を求める書簡を送ったとされる。だが、バイデンは一顧だにしていないようだ。選挙が終わったのに、なぜバイデンは反対し続けるのか。上智大教授の前嶋和弘氏(現代米国政治)は「元々、無理筋でした」と言って、こう続ける。 「日鉄が買収計画を出したのは昨年12月。大統領選の予備選が本格化するタイミングでラストベルトの労組を敵に回すのは、むちゃな話。最初に買収計画に反対したのは、民主党の上院議員です。大統領選が終わったからといってバイデン氏が賛成に転じたら、『民主党は嘘つき』と非難の的。トランプ氏に売国奴と言われてしまう」 日鉄はきのう、買収完了後、USスチールの米従業員に1人5000ドル(約76万円)のボーナスを支給すると発表した。 「今の米国でその金額はどうなんでしょう。逆効果かもしれません。米映画『ガン・ホー』(1986年公開=日米の自動車摩擦を描いた)の舞台となったペンシルベニアは『対日』が一番激しい地域。今もあの感覚がある」(前嶋和弘氏) バイデンが最終決断したら、ゲーム終了か。