<旋風・十勝からセンバツへ白樺学園>第1部 出場決定までの軌跡/上 叱咤を力に強く成長 /北海道
第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に、2019年の秋季全道大会に初優勝した白樺学園(芽室町)と、21世紀枠の帯広農(帯広市)の十勝勢2校が初出場する。秋季大会で巻き起こした旋風の再現を甲子園で狙う両校が、センバツへの切符を手にするまでの軌跡を追った。【高橋由衣】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 ◇主将として生まれた責任感 「お前は肩書を持っているだけだ」 19年夏に新チームが始動した直後、白樺学園の業天汰成(ぎょうてんたいせい)主将(2年)は、チームメートの言葉に主将になる意味と重みを思い知らされた。 1年生の春からベンチ入りし、3年生の最後の公式戦となった6月の十勝地区大会代表決定戦でも正捕手を務めたが、他人を注意することは苦手で「自分のことで精いっぱいだった」と振り返った。 副主将として業天主将を支える宮浦柚基(ゆずき)選手(同)は「誰かがエラーをしても何も言わなかった。それが業天自身のプレーの甘さにつながっていた」と指摘。バッテリーを組むエース、片山楽生(らいく)投手(同)には「お前が変わらなきゃチームは勝てない。地区大会で負けるぞ」と言われたこともあった。 「先輩たちがいるうちにいい結果を残したい」と、1、2年生で臨む秋季大会は全道優勝を目標に掲げた。心を一つにし、ミスには声をかけるという当たり前のことが少しずつでもできるよう心がけ、そのかいあって大会前日に独特の緊張感に包まれたチームに「切り替えていけばいける」と自然に声をかけられたほど、周囲に目が届くように変わった。 忘れられない先輩からの助言がある。「グラウンドで8人の顔を見ているお前がしっかりしないといけない」。チームメートからの数々の叱咤(しった)も力に変え、「何とか強いチームにしたかった」と振り返った。 札幌日大との全道大会決勝で五回裏に2ランを許し、1点差に詰め寄られた。それでも冷静さを失わなかった主将の「諦めるな。最後まで笑ってやろう」という言葉に今度はチームメートが勇気づけられた。戸出直樹監督は「主将として責任を持たせたことでチームが変わった」と、目を細めた。 道大会は全4試合中3試合で2桁安打を放ち、42得点を挙げ、強打の伝統は健在だったが、チームメートに「あいつが一番変わった」と認めさせた主将の成長こそが秋季全道大会で初優勝する原動力だった。