子ども食堂で自衛隊が募集広報 防衛事務次官通達に抵触か
募集か広報か
札幌地本は当初、子ども食堂での活動が就職勧誘の「募集」であることを隠さなかった。メールでは、中学生以上の子どもと保護者に対し「自衛隊で勤務するための紹介パンフレットや各種資料」を配りたいと記した。嶋田和央広報企画室長は、配ったパンフレットのうち「3種類は自衛隊募集の総合案内」と述べ、「いきなり募集や採用入隊の話をするわけにはいかないので、しっかりとまずは自衛隊を知っていただくところから話をした」と説明した。 だが、取材の終盤、筆者が「募集か広報か」と重ねてたずねると「何がなんでも入隊してくださいということではなく、しっかり自衛隊の職業を知ってもらう意味でのパンフレット。今回はあくまで募集ではなく、広報活動だ」と言い方を変えた。 なぜか。防衛事務次官が陸自、海自、空自の3幕僚長に出した2003(平成15)年4月3日の通達「中学校在校生に対する自衛隊生徒の採用試験に関する募集広報要領等について」(防人2第3441号)は、中学生に対する募集広報は、新聞やテレビなど一般向けは除き、「保護者」又は「学校の進路指導担当者」を通じて行なうと定める。さらに「参考」説明では、「広島地本(筆者注・広島地方協力本部)が中学校3年生本人宛てに、ちらし、ダイレクトメールを投函等した事案に鑑み、規定する」と発出の理由を記し、中学生に「行ってはならない募集広報は、ちらし、ダイレクトメール、メール、街頭での直接勧誘などの本人のみに対して行うもの」と明示している。 だが、今回の子ども食堂で配ったパンフレットは、募集要領を記した「採用案内」だ。就職勧誘の資料そのもので、通達違反ではないのか。札幌地本は「パンフレット等は興味のある人がいたら渡すよう子ども食堂の職員に依頼したもので、中学生へ直接配布はしていない」、防衛省は「関係規則に則り適切に行ったものと報告を受けている」と回答、違反には当たらないとの認識だ。