不動産価格・賃料価格高騰の一方で… 80代母経営の〈相続対策用〉マンション、家賃収入減少で「もう、売却するしか…」50代息子の憔悴【FPが解説】
賃料低下・金利上昇・修繕費などの経費増加で経営困難→もう売却しか…
生徒:もし借入金がなかったら、賃貸経営は大丈夫でしょうか? 先生:賃貸経営が苦しくなる理由は、賃料の低下と金利の上昇、修繕費など経費の増加が原因です。これらの問題は、事業開始後20年くらいして顕在化することが多いようです。 生徒:しかし、25年前に母がハウスメーカーにマンション建築を発注したとき、将来30年間にわたって黒字の安定経営が続くと説明されていました。事業収支シミュレーションの計算シートをもらっています。 先生:そのときの事業収支に書かれている賃料収入は、将来30年間変わらず一定となっていたのではないですか? そのようなバラ色の収支が実現するはずはありませんよ…。ハウスメーカーは受注のため、楽観的な収支シミュレーションを提示してきたのです。 生徒:では、家賃収入はどれくらい下がるのでしょうか…? 先生:新築物件と中古物件の賃料を比べると、中古物件の賃料のほうが低くなります。東京都でも築年数が1年異なれば、賃料単価は1%くらい低くなってきます。同じ立地で新築なら月額10万円の家賃でも、築25年になれば月額7万5,000円くらいになるでしょう。入居者の入れ替えのたびに、賃料は下がる可能性があるのです。 生徒:では、サブリースで賃料保証がある場合は大丈夫だったのでしょうか? 先生:いいえ。サブリースでも賃料の引き下げを求められることがありますよ。同じことです。 生徒:空室率はどうでしょうか? 先生:入居から退去までの期間と、入居者入れ替えのために空室になる期間を比較してみてください。一般的に、退去後に部屋の原状回復工事や入居者募集活動には、3ヵ月くらいかかります。入居から退去まで平均4年と仮定すると、4年間のうち3ヵ月間が空室となりますから、どれだけがんばっても、6%の空室率は発生します。 生徒:わかりました…。そうなると、いまから賃貸経営を立て直すことは難しそうですし、借入金を返済できなくなると大変です。母には思い切って売却してもらうしかありませんね…。相続対策のはずが、相続前にこんなことになるなんて…。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)