不動産価格・賃料価格高騰の一方で… 80代母経営の〈相続対策用〉マンション、家賃収入減少で「もう、売却するしか…」50代息子の憔悴【FPが解説】
東京都の不動産価格や家賃価格の上昇が著しいといわれていますが、必ずしもすべてのエリアに該当するとは限りません。そのような場所に築古で家賃収入の下がった賃貸物件を所有していると大変です。対応策はあるのでしょうか? ある50代男性の事例をもとに、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続対策のはずが…高齢母経営の1棟マンション、経営困難に
生徒:私の80代の母は25年前、相続税対策として東京の荒川区に賃貸マンションを1棟建設しました。信託銀行の提案で、購入代金のほとんどを銀行借入金でまかなっています。これまでは満室でしたが、昨年から空室が目立つようになり、家賃収入が減少してきました。いまは東京都内の不動産価格が高騰しているそうなので、思い切って売却すべきではないかと思うのですが、どうでしょうか? 先生:空き部屋が出てきたということは、家賃を下げなければいけない状態だということですね。荒川区だと家賃相場が下がっているかもしれませんよ。 生徒:そうなのですか! いま売却しても価格は安くなりそうですか…? 先生:東京都内の中古マンションの価格は、まだ上昇していますね。東日本不動産流通機構によれば、売買平均単価とマンション賃料平均単価のいずれも上昇しています。 生徒:不動産価格は、いまがいちばん高い時期でしょうか? 先生:中古マンション価格は2017年から上昇していましたが、2020年の東京オリンピック後は下がるだろうといわれていました。しかし驚くことに、その後は価格が下がるどころか、さらに上昇が続いてきました。日銀のゼロ金利政策もあり、低金利で住宅ローンを借りられたことが、一段と価格の上昇をもたらしたのではないかと思われます。
賃貸物件の表面利回り、4%を切ると赤字転落へ!?
生徒:母の賃貸マンションを売却する場合、投資家から要求される利回りはどれくらいでしょうか? 先生:東日本不動産流通機構によれば、表面利回りで4%くらいですね。 生徒:4%ですか。それぐらいあれば、まだ高く売れるということですね? 先生:2017年から2020年6月までは、表面利回り5%から7%は要求されていました。その後、一気に低下して、2023年に入ると4%になっています。賃貸経営にかかわる経費を考えると、この表面利回りが限界でしょう。これより下がったら赤字になります。 生徒:日銀がゼロ金利政策を解除すると、「金利上昇→銀行借入金を抱える賃貸経営は赤字」となりませんか? 先生:借入金を抱えていると、金利支払いと元本返済が発生します。赤字にならないとしても、元本返済を考えると、現金は出ていく一方になる可能性がありますね…。今後の賃貸経営は苦しくなるはずです。