13坪の自邸がメディアで話題に!住宅街の狭小地で開放感を実現した、注目の若手建築家のアイデアとは?
実例/狭小地に立つRC造の建物。内部に広がる伸びやかな空間で世間を驚かせた自邸
都内の約13坪(43㎡)の狭小地に立つコンクリート造の建物。室内は収納と水回り以外はワンルームでつながり、7枚の床が奥行きと高さを少しずつ変えながらスキップフロア状に積み上がっています。入り口からは吹き抜け越しに最上階まで見通すことができ、延床面積が約60㎡とは思えない広がりを感じさせます。 「広がりは数字ではなく、気積(床面積×高さ)の大きさやヌケ感、つながりといった空間構成でつくれるのだということを証明してみたかったんです。7枚の床にリビングや寝室といった明確な名称や機能はありません。床の段差は椅子や机になってくれるので、発想次第でいろんな使い方ができるようにしました」と五十嵐さん。 独立後は住宅を中心に活動。その理由をこう話します。「ゼネコンのような大きな仕事だとお金を出す人と使う人が別で、いろんな人が使う施設なので特殊解はつくれません。一方、住宅はお金を出す人と使う人が同じで、大きなお風呂がほしい人もいれば、浴槽はいらない人もいる。そういうところから生まれる空間の新しさがあると思うんです」 “空間の強度”という軸を携えながら、それぞれ個別の最適解をいちから考え抜く姿勢と力量。これからも五十嵐さんは、新しく、唯一無二の住まいを生み出し続けてくれることでしょう。
コラム/新しい発想!設計のポイントを紹介
自邸を設計するうえで行われたさまざまなスタディやビジョン構築。その一端をご覧に入れます。
無数のスケッチやCGを使った躯体のスタディ
1階の空間の気積をできる限り大きく確保することを念頭に、それぞれの床の位置やサイズを検討。上下階がつながりつつも、別々の空間だと認識できるのは高低差が約1.2mだと導き出し、スケッチやCGを使って広がりやヌケを感じられる位置関係を何度もシミュレーションしたといいます。
床とその段差だけで空間がつくられた大きなワンルーム
南北側を壁にした大きな箱のなかに、奥行きが少しずつ異なる7枚の床が高さを変えながら挿入された空間を構想。配管が必要なキッチンやバスルームは東側に集約。西側の床は庇のような役割を果たし、外部からの視線を程よくカットする目隠しとしても機能しています。 (モダンリビングNo.274 2024年5月号より)
いかがでしたか?自邸を例に、五十嵐さんの設計フィロソフィーを垣間見るインタビューをお届けしました。次回はさらに他のプロジェクトを数件ご紹介します。お楽しみに。