子どもの隠れ「栄養不足」が増えている? 意外な理由を東大医学博士が解説!|VERY
「戦後まもない」時期より足りていないタンパク質
令和元年の国民健康・栄養調査によると、現代の日本人のタンパク質摂取量の平均値は71.4グラム(※4)。これは、戦後まもない1950年代並みの低い値となっています(※5)。食習慣の変化などの他、景況感も要因の一つでしょう。前述の統計をさかのぼってみると、1995年をピークに日本人のタンパク質摂取量が下がっています。これはちょうどバブル崩壊後の時期にも重なります。景気の悪い時期が続き国民の所得が減ると、肉や魚よりも安価で買えるご飯やパンなどの炭水化物でおなかを満たそうとする傾向が出てくるようです。タンパク質不足になると、髪の毛や筋肉だけでなく、体の機能を調節するホルモンの生成にも影響が出る可能性があります。一般的に「幸せホルモン」といわれるセロトニンや、「やる気ホルモン」といわれるドーパミンを生成する原料にはタンパク質が使われています。そのためタンパク質が足りないと、「ついイライラしてしまう」「なんだか元気が出ない」とメンタル面の不調を感じやすいのです。
ドイツからの報告「朝食でタンパク質を摂ると優しくなれる」
2016年、ドイツのリューベック大学心理学研究所のストラング博士らが「タンパク質を朝食に摂ったほうが他人に優しくできる」という興味深い研究を発表しています(※6)。ぜひ、朝からタンパク質が含まれる食材を積極的に摂ってください。卵料理は食べやすく、調理も簡単でおすすめです。お子さんのおやつなら、小さなおにぎりを用意するのもいいですね。しらすや鮭フレークを混ぜるだけでもタンパク質がプラスできます。子どものおやつは補食(必要な栄養やエネルギーを満たすために、通常の食事以外に食べること)の意味を兼ねているので、外出のときも持っておくと便利です。次の食事までの腹持ちもよいのではないかと思います。
「腸を整えるとメンタルも整う」のはなぜ?
食物繊維を摂るとお通じがよくなるという話は昔から有名ですが、実は食物繊維が免疫にも大きく関わっているということが近年分かってきました。人間の免疫の7割は腸内の「腸管免疫」が担っているといわれており、その免疫力を最大限有効活用するには、腸内環境がとても重要です。腸内環境をバランスよく保つ鍵となるのが食物繊維です。食物繊維は腸内にいる善玉菌の栄養となり、腸内環境のバランスを整える役割をしています(※7)。食物繊維をしっかり摂ることで腸内環境が良好になると精神面にもよい影響が出ます。2016年の三木貴子氏らの研究によると、食物繊維の摂取量が多いほど、うつ病のリスクが減る可能性が高いという結果が出たそうです(※8)。神経叢(しんけいそう)と呼ばれる脳とのネットワーク網があり、腸の動きが活発になることで自律神経が副交感神経優位となり、体がリラックス状態になります。お腹の中が健康だと、心身ともに健やかでいられるということも言えそうです。食物繊維をたくさん摂れるメニューとして、大根やにんじん、ごぼうなどの根菜やこんにゃくなど、食物繊維が豊富な材料が使われている具だくさんの豚汁がおすすめです。おやつには、ひじきご飯やわかめご飯の小さなおにぎりを。食物繊維が含まれるこんにゃくゼリー(編集部注※のどに詰まるおそれがあるのでご注意ください)もいいですね。