主砲・大山の「FA宣言」で新生・藤川阪神に暗雲…日本一奪還に向け、来季の戦い方を下柳剛が徹底解説
やり投げ、砲丸投げ…下柳流トレーニング術
自分の場合、シーズンが終わったらすぐ山形にあった施設に入り1週間断食した。そこで身体に溜まった疲労物質や毒素を全部出す。断食が明けたら間を置かず奄美大島か沖縄へ飛んで陸上トレーニングに入る。ボールは握らない。だから野球場でなく陸上競技場で短距離用のスパイクを履いてとにかく走り込んだ。 ドジャースに行った山本由伸がやり投げトレーニングをしていることが有名だけど、そのはるか前からやり投げをトレーニングに取り入れていた。自分の場合は重さを考慮して男子用でなく女子用のやりを使った。 やり投げはまず、ちゃんとした腕の使い方をしないと投げられない。しかも、リリース時にきっちり弾かないときれいな回転で飛んでいかない。あと、じつは腕ではなく足をより使う。投げる際に前足をぐっと踏み込んでから身体を回転させるので、前足の腿の筋肉をすごく使う。これが投球時の身体の動き、メカニックを確認するには最適なトレーニングとなる。 トレーニングにはほかの陸上競技もいろいろ採り入れた。砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ……。投擲競技は全部取り入れた。トレーニングをしていた陸上競技場には社会人の全日本選手も来ていたので、その練習を見ていてヒントを得た。 2004年のオフからは、バルセロナ五輪の4×100mリレーに出場した鈴木久嗣氏に同行してもらい、陸上トレーニングに明け暮れた。2004年はちょうどストライキがあった年。自分は例年より早くオフに入った。結果、その年の9月~翌年1月までずっと陸上トレーニングを続けた。 2005年のシーズン前にはスパイクに入れるインソールも独自で開発した。話を聞きつけ「足と歩きの研究所」という足底板療法のスペシャリストの先生の元へ赴いて、左右の足裏のサイズから一番力の入りやすい箇所、癖を矯正するパーツなど、その場でシャドーピッチングを繰り返しながら全てのバランスを調べ上げてインソールを作った。 その結果、2005年は15勝3敗で最年長最多勝。この成績に前年から長く行ってきた自主トレが大きく影響したのは間違いない。それだけオフのトレーニングは大切。オフとはいえ休みではない。ピッチャーなら消耗した肩を適度にメンテナンスしつつ、弱り切った下半身を鍛え上げ股関節の柔軟性を増すケアをする。 今シーズン大車輪の活躍をした桐敷と石井には、来シーズン以降も活躍してもらうために、オフの時間を有効に使ってほしい。