公任と顕光には痛恨か?『紫式部日記』完全再現に狂喜…ウイカ「清少納言」も復活でまひろとの対立近づく【光る君へ】
そうきたか・・・! 紫式部の「清少納言」批評への兆し
そして『紫式部日記』といえばもう一つ有名なのが、同時代の女流歌人・作家たちを、キレッキレの物言いで批評した部分。なかでも清少納言は「めっちゃ偉そう」「知ったかぶり」「こんな人は将来ろくなことにならない」と、まったく良いところなしでおとしめまくっている。 しかし『光る君へ』の紫式部(まひろ)と清少納言(ききょう)の場合、2人は友情のような絆で結ばれていたし、『枕草子』誕生のきっかけを与えたのは紫式部という、大胆な設定まで付いてきた。 この友好関係が、どうしたら崩れるのか・・・? と思ったら、ついにその兆しが今回で見えてきた。一条天皇が、定子の光り輝く姿をとどめた『枕草子』ではなく、彰子の女房が書いた新しい物語に夢中になっており、その正体がよりによってまひろだと知ったことだ。この事実を伊周から聞いたときの、ファーストサマーウイカの驚きと怒りが混じったようななんとも言えない表情が、非常に素晴らしかった。 友だちだと思っていたまひろが、憎き藤原道長の娘に仕えている。これだけでも敵認定されるには十分だけど、自分が書いた文章より、まひろの書いた小説の方に天皇が夢中になっているというのも、作家としてのプライドを崩される事実だろう。しかも天皇が『枕草子』から遠ざかると、定子との思い出が上書きされて忘れられるという恐れもある。この二重三重の屈辱から、ききょうがまひろに対して攻撃的になってもおかしくはない。 清少納言が紫式部のことをどう思っていたのかは、それについて記されたものはないので、現代の私たちは想像の翼を広げるしかない。そうして翼を広げた脚本の大石静は、ききょう=清少納言に『源氏物語』をどう評価させるのか? そしてまひろは反撃として、日記に悪口を書いたのか? それは単なる報復なのか、あるいはなにか政治的な思惑が絡むのか・・・この2人の才女をめぐるミステリーの行方は、まぎれもなく今後の大きな見どころとなるだろう。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。9月29日放送の第37回「波紋」では、彰子がまひろの記した物語で豪華本を作ろうとする様子と、彰子が一条天皇の皇子を産んだことで、王位継承問題に波乱が起きるところが描かれる。 文/吉永美和子