ポップアート(10月25日)
「バナナジャケット」。往年のロックファンなら、きっと懐かしく思い出す。白いレコードジャケットに、一本の黄色いバナナが描かれている。皮はシール。はがすとピンクの実が現れる▼1967年に米国で発売されたアルバム「ヴェルヴェットアンダーグラウンド&ニコ」だ。デザインしたのは気鋭の芸術家アンディ・ウォーホル。背徳や退廃を不気味に奏でた収録曲は、耳当たりが良くない。経済発展が急速に進み、戦争を続ける大国の病巣を風刺したとも。人を食ったようにも映る「表紙」のイラストが、重く暗い曲調になぜかマッチした▼ウォーホルの作品は、大衆的な題材を明るい色調で表すポップアートと言われる。その道の名作138点を集めた「時代を変えた4人」展があす26日、福島市の県立美術館で開幕する。スープ缶のロゴマークを描いた彼の代表作「キャンベル・スープ」もやってきた。大量消費社会への警句とも見て取れるが、いかに▼バナナジャケットには「外れ」があった。確か輸入盤。皮がプリントされているが、はがせない。それもまた一興。「運が悪い」と仲間内で盛り上がった記憶がある。ちゃめっけたっぷりの前衛アートには外れなし。<2024・10・25>