家族の形は多様化で世帯から個人に…年金など、これからの社会制度が変わる可能性も?
筆者が2023年に関心を寄せた出来事は、LGBTQ法案が国会で可決され、いわゆるLGBT理解増進法が施行されたことです。一見、この出来事は家計には何の関わりもないように思うかもしれませんが、人権という視点から長い目で見た場合、私たちの家計に大きな影響をもたらす可能性があると考えています。 少し複雑で、おそらく賛否両論に意見が分かれるテーマかもしれません。しかし、時代の大局を見るうえではとても大切なことなので、今回のテーマとして考えてみたいと思います。
家族の形は以前より多様化している
一般的な家族のモデルについて、例えば図表1のように「夫婦と2人の子ども」で、夫が働き、妻は専業主婦として子どもを育てるとイメージされる方が多いのではないでしょうか。
※筆者作成 ただし、このような家族観を持っている方は実際少ないでしょう。また、夫婦共働きが当たり前になりつつあるいま、子育てに夫が参加するのも普通のことと感じる方は増えたのではないでしょうか。 片や、近年の離婚率(婚姻件数に対する離婚件数の割合)は3割を上回る程度で推移しており、父親のみ、母親のみで子育てをしている家族もかつてと比べて珍しくなくなりました。
※筆者作成 また、3世代が同居する家族の形もあれば、単身世帯が増加しているほか、同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認める自治体も現れ、家族観は以前と比べて多様化しています。
家族の形が変わると、社会制度も変わる可能性が高まる
このような家族形態の変化がもたらす社会制度への影響については、それほど関心が向けられていないのかもしれません。しかし、足元では家族形態の多様化に合わせ、特に世帯よりも個人に焦点を当てた制度変更に関する議論が行われています。 例えば、夫婦共働きの世帯が増え、専業主婦世帯が少なくなったことで、夫婦間での扶養関係を税制面で見直そうという動きが出ています。この点については、世論の反発を受けることが想定できるため、すぐに変わることはないかもしれません。ただし、高齢化社会の進展を鑑みれば、個人ごとに税金を納めてもらったほうが国としては税収が増える見込みが高まるので、長い年月をかけて少しずつ変化していくことが考えられます。 また、話題になっている年収の壁は社会保険の話ですが、似たような理由で少しずつ是正され、いずれは撤廃されることになるかもしれません。さらに国民年金の第3号被保険者制度について、専業主婦も自ら国民年金の保険料を納めたほうがいいという意見(第3号被保険者制度の廃止)があり、こちらも今後、注視する必要がある項目の一つといえるでしょう。 一方、子育てに対する支援策は、一昔前と比べると随分変わりました。男性の育休取得の推進はもとより、地域全体で子育てをするという発想の下、子育て支援センターの開設やファミリーサポート制度の創設など、共働き世帯だけでなく、片親世帯にも相談援助などの手が差し伸べられるようになっています。 これらの動きは、女性の社会進出が広がったことを受けて起こっているものですが、その背景には共働き夫婦の増加の影響が顕著に見られます。