小林製薬の紅麹問題、中国で競争力弱まる日本ブランドに追い打ち
(ブルームバーグ): 小林製薬の「紅麹(こうじ)」問題が中国で関心を集めている。景気悪化で消費が細る中、信頼を失いかねない問題の発生はブランド力を武器としてきた現地日本企業の足かせになる。
日本を旅行する中国人観光客の多くは、ドラッグストアに立ち寄ると健康補助食品を購入することから小林製薬の知名度は高い。ばんそうこうや鎮痛剤など同社の商品の多くが中国のソーシャルメディアに取り上げられ、土産の定番とも言える。
だが、紅麹問題が明るみに出ると評価は一変し、中国のメディアは問題をつぶさに追い始めた。小林製薬が早期に消費者にリスク開示しなかったという対応の遅さを非難するメディアもあれば、副作用への危険から他の国で禁止されている成分が含まれていると伝えるメディアまでさまざまだ。
Eコマース・プラットフォームのウェブサイトからデータを集めて分析するリヤンダンルー・データによると、中国ECサイト最大手の淘宝(タオバオ)と天猫(Tmall)における小林製薬の2024年上期売上は前年同期比で54%減少した。小林製薬の広報担当者は「紅麹案件を受けて広告を中止している影響が出ているものと思う」とコメントした。
紅麹問題は中国の消費者がメード・イン・ジャパンに長年抱いてきた匠(たくみ)の技や高品質といったイメージを傷つけた。かつての中産階級がより良い代替品を日本のブランドに求めたのも今は昔だ。
昨年8月、日本政府が福島第一原子力発電所で保管されていた放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出したことで、化粧品から海産物に至るまで日本に対する不買運動が中国国内で起きた。紅麹問題は、中国の消費者が日本ブランドを見つめ直すもう一つのきっかけとなる可能性もある。
企業の決断
中国の景気減速は消費者の財布のひもを固くし、より安価な代替品を求める「平替(ピンティー)」と呼ばれる消費行動が広がった。例えば資生堂は、現地ブランドのプロヤ・コスメティックスとの厳しい競争にさらされている。