阪神ファンがカップラーメンを投げ入れた…「日本シリーズ指笛騒動」以前もあった観客の信じられない“妨害行為”
テープを投げ入れ捕球を妨害!
その甲子園では、1999年5月22日の阪神対巨人で、飛球を捕ろうとした外野手目がけてスタンドのファンがテープを投げ込む妨害事件も起きている。 阪神が3対2とリードの6回1死、石井浩郎がレフトに長打性の大飛球を放った。桧山進次郎がフェンスにくっつく形で捕球態勢に入ったが、スタンド最前列から青いテープが投げ込まれ、捕球に失敗。二塁打になった。 桧山は「(テープは)ボールにも顔にも当たっていませんが、視界に入りました。(左翼席のファンを)挑発することになるから、アピールはしませんでした」と少なからずプレーに影響があったことを証言した。 だが、友寄正人二塁塁審は「こういう行為は絶対にやめてほしい」と注意喚起しながらも、「ボールが落ちたあと、テープが落ちたと判断したので、妨害行為とは思わなかった」という見解を示した。 ここから試合の流れは巨人へ。元木大介の中前安打で1死一、三塁とチャンスを広げたあと、川相昌弘の遊ゴロで3対3の同点。阪神ファンにとっては「あれがなければ……」と納得できない思いだっただろう。 だが、7回から登板した遠山奨志が再び流れを引き寄せる。この回を3者凡退に打ち取ると、8回1死一塁の打席でバットを折りながら左前安打を放ち、暴投による勝ち越し点に貢献。8回1死から福原忍にリレーして4対3で逃げ切り、NPB史上最長ブランク(当時)の10年ぶりの勝利投手になった。 妨害行為に端を発した嫌なムードを一変させたプロ13年目の苦労人に、野村克也監督も「遠山は最高だね。アイ・ラブ遠山や。社長賞が出ないなら、監督賞ものだ」と最高の賛辞を贈っていた。
虎ファンがカップラーメンを投げつけて妨害!
結果的に“幻の完全試合”に影響を及ぼす妨害事件が起きたのが、1996年4月25日の横浜対阪神である。 4回まで三浦大輔にパーフェクトに抑えられていた阪神は、0対8とリードされた5回、先頭の4番・グレンがレフトに大飛球を打ち上げた。阪神ファンは大歓声を上げたが、もうひと伸び足りず、佐伯貴弘がフェンス近くで捕球態勢に入った。 ところが、左翼席に陣取った虎ファンがカップラーメンを投げつけて妨害。佐伯は何とか捕球したものの、前日もメガホンを投げつけられたとあって、我慢も限界に達し、妨害したファンに怒りを爆発させた。ベンチから大矢明彦監督がおっとり刀で駆けつけ、何とか騒動を収めたが、大矢監督も「ちょっと危ないよな」と佐伯に同情的だった。 そして、試合再開直後、三浦は桧山進次郎に四球を許し、打者13人でパーフェクトはストップ。それでも気持ちを切らすことなく、6回まで無安打無失点に抑えたが、7回の先頭打者・久慈照嘉に中前安打され、“ノーノー未遂”となった。 「オレのせいで(試合が中断し)大輔のリズムを崩してしまった。あれがなければ、パーフェクトできたのに……」と悔やんだ佐伯だったが、ファンのマナーに問題があったのも事実。 本塁打性の打球をスタンドから身を乗り出してキャッチする妨害行為は、意図的でなかったものもあるが、明らかに投球や捕球などのプレーを妨げる目的の悪質な行為は、断じて許されない。 久保田龍雄(くぼた・たつお) 1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。 デイリー新潮編集部
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