日本の食がキケン…「毎日1人茶碗1杯分のご飯を捨てている」という「衝撃的実態」
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
毎日1人茶碗1杯分のご飯を捨てている「食品ロス」
人口が急減し、しかも高齢者が増えていけば国内の食料需要も減っていく。いたずらに輸入量や生産量を増やさなくとも、ある程度は自給率が自然上昇する可能性があるということだ。 食料確保策としては、食生活の見直しや食品ロスの削減という方法もある。食料自給率を品目別に見ると、カロリーベース(2020年度)でも米は98%、野菜は76%、魚介類は51%である。日本の自給率の低迷は食生活の急速な欧米化によるところが大きいのだ。国内生産されている食材を使って料理するだけで自給率は改善する。 食品ロスについてもかなり改善の余地がある。農水省によれば2019年度の食品ロスは570万トンに上るが、これは1人あたり毎日茶碗1杯分のご飯を捨てているのとほぼ同じ量だ。570万トンのうち生産や流通過程で廃棄される事業系食品ロスが54%、各家庭で食べ残されるロスが46%である。 だが、食品ロス削減の取り組みを見ると、“自己満足”で終わっているケースが多い。典型的なのが堆肥へのリサイクルだ。「自分の食べ残しを無駄にせずに済んだ」ということだろうが、その堆肥に需要がなければ「捨てられる食品」が「捨てられる堆肥」へと姿を変えるだけである。求められるのは、食べ残さない工夫だ。
これから農業生産者や食品メーカーに求められること
それには食品メーカーの発想転換も重要となる。人口減少社会においては食料の「保存」と「的確な流通」がポイントだ。 注目したいのが、生産や食品自体にテクノロジーを活用するフードテックだ。人工肉や昆虫食材が代表例として挙げられることが多いが、植物工場などの生産段階から食材流通、調理まで幅広い分野での新技術開発や実用化の動きが広がり始めている。AIに制御された植物工場は24時間稼働が可能で、過剰生産や天候不順による被害を防ぐ。需要に応じた効率的な配送まで一貫して実現できれば食品ロスを削減できるだけでなく、人手不足の解消にもつながる。 食材の長期保存を可能とする技術も期待される。高齢者の一人暮らし世帯が増え続け、食べ切る前に味が落ちたり、傷(いた)んだりして捨てられることが少なくない。冷凍技術や保存パックなどの開発・改良は進んできたが、AIで食材ごとに管理できれば捨てられる量をさらに減らすことができるだろう。 これまでの農産物や加工食品は「おいしさ」や「見栄え」が価値を向上させる大きな要件となってきたが、これからは、そうした要素に加えて長期にわたって鮮度が落ちないようにする革新技術が必須となる。農作物の品質改良であり、保存方法の開発である。食品メーカーの場合、人口減少に伴う国内マーケットの縮小が売り上げ減に直結しやすい。活路を見出すためにも、新たな付加価値は重要となる。 例えば、レタスをシャキッとした食感のまま、地球の裏側にある国々の食卓にまで届けられるようになれば、高付加価値農産物として海外需要も見込める。食料安全保障上の危機を単なる食料自給率向上に終わらせるのではなく、日本農業と食品産業の飛躍につなげるチャンスとすることである。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)