子宮けいがん防ぐワクチン 17~27歳女性の半数以上が接種も、23歳前後で低い接種率
子宮けいがんを防ぐためのワクチンを接種した女性は、17歳から27歳では半数を超えたとみられることがわかりました。 HPVワクチンは子宮けいがんを防ぐためのもので、1997年度から2007年度に産まれた女性(今年度17歳から27歳)が無料で打つことができる「キャッチアップ接種」の期限は来年3月末です。HPVワクチンは3回接種で、1回目から1か月あけて2回目、2回目から3か月あけて3回目を打つ必要がありますが、今月中に1回目を接種すれば、期限内に3回打つことができ、3回で合計およそ9万円の接種費用はすべて公費でまかなわれ、本人負担なしとなります。 東京・杉並区のたむら医院には、9月以降、キャッチアップ接種を受けに来る女性が増え、今月に入っても週に数人が新たに接種しているということです。接種した女性(23)は「打たないつもりだったが、医師から説明を受けて、打つことにしました」と話し、別の女性(23)は「母(医療従事者)の勧めで打つことにしました。最近、私の周りでも打つ人がいます」と話していました。
田村剛医師は「通常のスケジュールとしては9月中に1回目接種をと呼びかけてきたが、11月に1回目を接種すれば、12月に2回目接種、3回目は3月末に何とか間に合います。打つかどうか迷っている方が多いが、日本産科婦人科学会のHPなどで情報を調べて欲しい。子宮けいがんは若い女性もかかるもの。ワクチンで防げるがんなので、この先の人生を考えて、接種して欲しい」と説明しています。
医師に医療情報を提供するエムスリー総研の推計では、HPVワクチン(1回目接種)の累積接種率は、厚労省などが接種の呼びかけを強めた今年9月に高まりを見せ、10月末の時点で、17歳から27歳の女性では接種した人が55.4%と半数を超えています。 しかし年齢によって接種率に大きな差があります。17歳から24歳では、今年7月時点の30.7%から12ポイント以上増えたものの10月末の累積接種率は42.5%にとどまります。一方、もともと接種率の高い25歳から27歳では86.1%と9割近くが接種したとみられます。 ■子宮けいがんになる人が多い年代と少ない年代ができてしまう恐れが・・・ 詳しく学年ごとにみると、特に21歳から23歳での接種率は37%程度で、26歳27歳では88%と大きな差があります。 イギリスなど15年以上、HPVワクチン接種を続け、接種率が9割近い国では、実際に子宮けいがんになる女性が大きく減っていると報告されています。 ワクチンに詳しい医師は日本の状況について「このままでは、20年後に子宮けいがんになる人の割合は、年代によって歴然と差が出ることが確実だ」と懸念を示します。 つまり、今の20代後半の年代ではワクチンを打つことにより、子宮けいがんになる人が減る一方で、今の24歳以下の女性では、将来子宮けいがんになる人が再び増えると予測されるというのです。 ■なぜ年代で接種率が大きく違うのか HPVワクチンは、定期接種として小学6年生から高校1年生の年代の女性は無料で接種できます。しかし、接種後に全身の痛みなどを訴える例が相次いだのを受け、厚労省は2013年6月からは、個別にはがきなどで接種を勧めることを一時中止しました。 厚労省は、接種後のさまざまな症状が、HPVワクチンを接種した人にも、していない人にも同じぐらいの割合で見られたといった研究結果や海外では接種によって子宮けいがんになる人が減ったというデータが発表されたことなどから、安全性と有効性を考慮した結果、2022年4月、個別にはがきなどで接種を積極的に勧奨することを再開しました。 厚労省は、積極的勧奨を中止していた時期に接種対象だった年代の女性(1997年度から2007年度生まれ)には「キャッチアップ接種」として来年3月末までは無料で接種できる機会を設けてきました。 「キャッチアップ接種」の対象年代のうち、今の20代後半の女性では、積極的勧奨が中止される前に接種を終えていた人も多く、接種率が高くなっています。 一方、今の24歳以下は、ちょうど接種を始める頃に、お知らせが届かない状態になり、このワクチンそのものを知らない人が多い上、「接種後の症状」の報道などを当時見た保護者が心配し、接種に後ろ向きの人も多いとみられます。 産婦人科の医師は「HPVワクチンは1回の接種でも効果があるということで、海外では1回接種に制度を変えた国もある。3回接種が望ましいが、1回のみの接種でも、打たないよりは子宮けいがんを予防する効果がある。」として「3月末までに1回だけでも接種を」とアドバイスしています。 ■接種には何が必要? HPVワクチンを接種するには、市区町村から郵送されたHPVワクチン専用の接種券が必要で、紛失した場合は市区町村に依頼すれば再発行してもらえます。そして診療所やクリニックには「HPVワクチン接種」と伝えて、予約をとる必要があります。自治体によっては、夜間に接種の機会を提供している場合もあります。