メルセデスは来季、チャンピオン経験者を起用する? しかしロズベルグとベッテルの可能性はゼロか
このオフシーズン最大の衝撃となった、ルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍。その後任についてメルセデスのトト・ウルフ代表は「大胆」な選択をすると公言している。しかしこの「大胆」な戦略の中には、ニコ・ロズベルグやセバスチャン・ベッテルといったチャンピオン獲得経験を持つドライバーらは、入っていないようだ。 F1マシンが”グリーン・ヘル”を駆ける! レッドブル、ニュルブルクリンクでデモ走行イベント開催。ベッテルや角田裕毅が参加 2月初旬、ハミルトンが今シーズン限りでメルセデスを離れ、2025年からフェラーリに加入することが明かされた。 その後任人事についてウルフ代表は、「大胆」なモノになると発言。その最有力候補と見なされているのは、今季FIA F2に参戦するメルセデスの秘蔵っ子、アンドレア・キミ・アントネッリである。 アントネッリはカートで実力を発揮した後イタリアF1やフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパなどを制し、FIA F3を飛び級して今季はFIA F2にプレマから参戦。そこでいきなり好成績を残すようなことがあれば、F1昇格への道はグッと近付くことになり、実際にウルフ代表の”大胆な選択”につながる可能性は十二分にある。 しかしその一方で、ウルフ代表には別の”大胆な選択”が用意されている可能性がある。それは、アントネッリがF1で戦う準備が整うまでの間、ジョージ・ラッセルをサポートするだけの力と実績を持つベテランを起用することだ。 その候補としては、何人かのドライバーが考えられるが、メルセデスで2016年のF1チャンピオンに輝いたニコ・ロズベルグや、4度のチャンピオン経験者であるセバスチャン・ベッテルらの名前も取り沙汰された。 しかしウルフ代表の選択肢からは、このふたりの名前は既に消えてしまったようだ。 ロズベルグは、2016年にF1チャンピオンに輝いた数日後、突如引退することを発表。その後は常々、F1復帰に興味はないと語ってきた。 最近のインタビューの中でも、F1に復帰したいと思うような願望はないと明かしている。 「もう終わったことだ。復帰の可能性はないよ」 南ドイツ新聞のインタビューに、ロズベルグはそう語った。彼は今、金融投資家として活躍しており、プライベートな生活も満喫している。 そのロズベルグは、F1についてさらに次のように続けた。 「僕はその危険性をとても尊重している」 「当時の僕はそれ(F1)しかできなかった。脳のシナプスを鍛えるためにも、1年間集中して準備しなければいけなかったんだ」 「レーシングドライバーは、最高速度で素早く反応し、正確でなければいけない。長く休んだことで、その感覚を失った。遠心力がかかる状態でステアリングホイールを握るというだけでも、筋肉には大きな負荷がかかるんだ」 一方でベッテルは、最近はF1への関心を公に話していない。WEC(世界耐久選手権)に参戦する可能性が取り沙汰されたこともあったが、今ではそれも頓挫しており、F1復帰という可能性も低いと言わざるを得ない。 ウルフ代表は最近、ベッテルについて次のように語っている。 「彼はもうレースをしないという決断をしたと思う。我々は定期的に会って話すことがある。昨日も話はしたが、それは将来、メルセデスを運転するためのモノではないんだ」 ウルフ代表は『Auto Motor Und Sport』のインタビューにそう語った。 ロズベルグとベッテルが候補ではなくなったとすれば、残る候補となるベテランはひとりしかいない。それはフェルナンド・アロンソだ。 アストンマーティンの新車発表の際にアロンソは、現在のエントリーリストに記載されているチャンピオン経験者は3人だけであり、そのうち将来の去就が決まっていないのは自分だけ……そういう意味でも、ドライバー市場で良い位置に立っていると語った。 アロンソは優先すべきはアストンマーティンとの契約を延長することだとしながらも、マネージャーであるフラビオ・ブリアトーレを含め、他のチームも関心を寄せることになるだろうと示唆した。 他のチームからの接触はあったのかと尋ねられた際、アロンソは次のように語った。 「僕に直接連絡が来たことはないよ。でも僕の将来のポジションについて、一般的に関心があるのは確かだ」 「僕に最も関心を示してくれているチーム、毎週尋ねてくれるチームはアストンマーティンなので、様子を見てみようと思っている」 なおブリアトーレは先日、ウルフ代表と会っている写真をインスタグラムに投稿した。一体何の話をしていたのか大いに話題となり、一部では「アロンソがメルセデスに移籍するのではないか」という推論も立てられた。 それはブリアトーレが意図したモノだったのかもしれないし、単純に”無邪気なスナップ”を投稿しただけかもしれない。 とはいえ今のところ、メルセデスは来季以降のラインアップを急いで決めるつもりはないようだ。その間に、アントネッリがどんな成長を見せるのか、そしてドライバー市場がどう動いていくのか、見ていくことになるだろう。 ウルフ代表の最終選択が「大胆」になる可能性は、まだまだ十分に残されているかもしれない。
Jonathan Noble, Christian Nimmervoll
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