バッハを深く愛した者にしか書けない作品!? ショパンの『前奏曲集』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ショパン『前奏曲集』 短くも美しい24の宝石たち
今日6月30日は、ポーランド出身のピアニスト、ラファウ・ブレハッチ(1985~)の誕生日です。 彼の名を一躍有名にしたのが、2005年の第15回「ショパン国際ピアノ・コンクール」での優勝です。それ以前の2003年には、「浜松国際ピアノ・コンクール」において2位入賞(1位なし)を果たしますが、当時、自宅にアップライト・ピアノしか持っていなかったブレハッチのために、日本に出発する2か月前にワルシャワ市がグランドピアノを提供したという美しい逸話が残されています。 そのブレハッチが、ショパンコンクール優勝後のデビュー盤に選んだ作品が、ショパンの『前奏曲集』でした。1839年1月にマヨルカ島で完成されたこの曲集は、J・S・バッハの『平均律クラヴィーア曲集』に敬意を表し、それに習って24曲がすべて異なる調性で書かれたピアノ曲です。 有名な第15番『雨だれ』や太田胃散のCMでおなじみの第7番を含む短くも美しい24曲は、さながら宝石のような輝きを放ちます。書籍『ショパンの生涯』の作者J・ハネカーは、「これはバッハを深く愛した者にしか書けない作品だ」と語っています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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