レイヴェイが語る、古のジャズと今日的なリリシズムの融合
サマーソニック初出演を控える中国系アイスランド人のシンガー・ソングライター、レイヴェイ(Laufey)。第66回グラミー賞で初ノミネートにして初受賞を果たした最新アルバムの拡張版『Bewitched: The Goddess Edition』が日本盤でリリースされた。彼女はなぜここまで愛される存在になったのか? 最新インタビューをお届けする。 【画像を見る】レイヴェイの貴重ライブ写真 * 現在25歳のレイヴェイにとって、ここ半年間は、まさに非現実的な日々の連続だった。昨年9月に幻想的で洗練された2ndアルバム『Bewitched』をリリースし、今年2月には同作で自身初のグラミー賞を手に入れた。 「あのときは『いったい何が起きたの?』と、頭の中が真っ白になりました」と、レイヴェイは授賞式で自分の名前が呼ばれた瞬間を振り返る。「マネージャーには『受賞したときに備えて、スピーチの内容を考えておいてください』と言われていたのですが、ひと言も考えていませんでした。自分が受賞すると考えること自体、おこがましすぎる気がして……中国人の母親から、アジア人特有の謙虚さのようなものを受け継いだのかもしれませんね。子どもの頃から母親には、いつも謙虚でありなさい、多くを求めすぎてはいけないよ、と言われてきましたから」。 受賞の興奮が冷めやらぬまま、ヨーロッパと北米を中心としたツアーがはじまった。今年の春から夏にかけては、街から街へと忙しく動き回る日々が続くことを覚悟している。8月にはサマーソニックに出演し、9月にはミツキのオープニングアクトを務める(「長年の夢でした」とレイヴェイ)。さる4月には、2ndアルバムのデラックス盤『Bewitched: The Goddess Edition』をリリースした。追加収録された新曲4曲では、かつてないほど「誠実でリアル」に自分を表現した、とレイヴェイは言う。 「いままでの作品では、自分自身の陽気で軽い側面を見せてきました――それも、やや皮肉を込めて、自分で自分をからかうような感じで。デラックス盤に収録された楽曲の中には、少し皮肉が込められたものもいくつかあります。でも個人的には、このアルバムは私の人間的な成長を描いたもの――『Bewitched』で綴ったストーリーの続編だと思っています」 レイヴェイの成長は、デラックス盤のタイトルにもなった「Goddess」に見事にあらわれている。「女神」と題されたこの曲は、女性であることや有名人として生きること、“完璧なイメージ”を維持することへのプレッシャーに関する瞑想と呼ぶにふさわしい。「ばっちりメイクときれいな衣装で舞台に立ち、何千人ものファンの方々から『女神』として見られるのは、なんだか不思議な気分です」とレイヴェイ。「実際のところ、ライブでは気分が高揚します。でも、終わって家に帰ると『あーあ。自分はひとりぼっち。ちっとも女神っぽくない。メイクも少し崩れてるし、衣装も合ってないような気がする。結局のところ、私は人間なんだ』と気づくのです」。 ソフトペダルから繰り出されるやさしいピアノの音色に重なるレイヴェイの歌声は、最初は何かを探るかのようにためらっている。だが、その後は、包み込むようなオーケストラの調べとともに自信に満ちていく。レイヴェイ史上もっとも美しいアレンジメントに乗せて、“これでわかったでしょう? 私は、あなたの女神なんかじゃないってこと“と歌うせつない歌詞が胸を打つ。レイヴェイは、自分が生きている「新しい人生」(と特定の男性)のことを思いながらこの曲を書いたと語ったが、その普遍的なメッセージはリスナーにも共感してもらえるのでは、と期待をにじませる。 「これは、女性が女性であるがゆえに感じるものなんだと思います。社会や学校、人前にいる自分、そしてSNSの自分は、完璧な人間であるかのように感じるのに、家に帰ると、そうした華やかさとは無縁の自分に気づくんです」