日本マイクロソフト、女性の開発者・技術者のスキルアップを支援するAI人材育成支援プログラムの第二期を開始
日本マイクロソフト株式会社は11日、女性向けAI人材育成支援プログラム「Code; Without Barriers in Japan」の取り組みについて説明した。2024年5月から10月までの第一期では約7000人の女性が参加。11月11日から第二期の参加者募集を開始している。 【画像】日本マイクロソフト プロフェッショナルスキル開発本部トレーニングプログラムマネージャの河村明子氏 日本マイクロソフト プロフェッショナルスキル開発本部トレーニングプログラムマネージャの河村明子氏は、「これまで事務部門で働いていた人や、バックオフィスで働いている人たちが、新たなスキルを習得し、新たな仕事に就くことを支援し、AI人材として活躍するために必要な機会を提供することを目指すプログラムである。参加者の80%以上が初めてAIに触れた人で、多くの人が新たな一歩を踏み出している」と述べ、「第一期は、大きな成功を収めたと考えている」と総括した。 「Code; Without Barriers(CWB)」は、急成長するクラウドやAI、デジタル技術分野におけるジェンダーギャップの解消を目指して、女性AI人材の育成と、女性開発者や技術者のスキルアップを支援するプログラムで、Microsoftはアジア太平洋地域で展開してきた経緯がある。 日本では、2024年5月に提供を開始。NTT-ME、トレノケートホールディングス、パソナ、リンクトイン・ジャパンといったパートナー企業のほか、ボランティア組織であるWomen In Tech Japanとの連携を通じてAI人材の育成を支援してきた。また、働き手不足の解消を図り、企業内での女性デジタル人材比率の改善、男女賃金格差の改善に貢献することを目指して取り組みを進めている。2027年までに30万人にスキリング機会を提供する計画であり、年々参加者を拡大していく考えを示す。 プログラムはオンラインでの参加が可能であり、参加は無料。生成AIの基礎知識やプロンプトエンジニアリングの基本講座、Microsoft Copilot for Microsoft 365の使いこなし、Power Platformでの自動化、Azure Open AI入門、Azure AIによる開発といった学習内容のほか、キャリアフェアやハッカソン、ビジネスリーダーからのメンターシップやサポート、オフラインでのミートアップイベントなどを実施。Microsoft Copilot for Microsoft 365を中心としたスキリングプログラムも提供している。 具体的には、「AIを使う」と「AIを創る」という2つのコースを用意。「AIを使う」は、ビジネスユース向けに設計されたもので、AIの仕組みやプロンプトエンジニアリングを学ぶことになる。Microsoft Copilot for Microsoft 365を活用した業務の効率化や、Power platformによる業務の自動化を進めるためのスキルを習得する。 「AIを創る」では、開発者向けのコースで、Azure AIを利用した開発や、Azure OpenAIを使用した生成AIソリューションの開発手法、実装方法について学ぶ。AIアブリやサービス開発に必要なスキルも習得する。同プログラムには、初心者という段階の人が多く参加しており、PythonやC♯といった言語に関する学習を通じて、これからエンジニアを目指したいという人にも最適だという。 さらに、マイクロソフトが掲げる「グロースマインドセット(成長型思考)」についても学ぶ機会を設けている。「これしかできないではなく、まだまだできる」、「失敗から学び、向上していく」という姿勢を学び、それをもとに学習を進めていくことも特徴のひとつだといえる。 日本マイクロソフト 執行役員 チーフラーニングオフィサー プロフェッショナルスキル開発本部長の野田景子氏は、「新たな雇用原則として、AI技術への適性が要素になるといわれている。調査では、経験がある人よりも、経験は浅くても、AIスキルを持った人材を採用したいと考えているリーダーが71%に達している。また、IT業界においてもジェンダーギャップが大きく、そのギャップを埋める必要がある」と前置き。 「Code; Without Barriers in Japanでは、AIを用いて、IT業界が抱えるジェンダーギャップの解消を目指し、女性のAI人材の育成に特化し、パートナー各社とワンチームとなり、AIスキルの習得機会を提供している。第一期の参加者のなかには、キャリアの幅を広げることができた例もある。多くの女性にAIスキル習得の機会を提供し、AI人材として活躍してもらえる支援を行う」と述べた。 第一期では7000人が参加し、2500人がプログラムを修了して、デジタルバッジを取得した。Linked Inのコミュニティには2000人が参加しているという。オンラインで参加できるため、7000人のなかには、東北や九州、関西からの参加もあったとした。 Code; Without Barriers in Japan 第一期の修了者である夜久美由紀氏は、いくつかのキャリアチェンジや専業主婦を経て、現在は地方自治体で健康相談員として勤務。「AIを使う」「AIを創る」の2つのコースを修了した。派遣会社からの紹介で同プログラムを知って参加したという。 「AIの進化が激しく、このままではテクノロジー弱者になってしまうという不運と焦りがあった。このスキルを得られればキャリアチェンジのチャンスが広がると考えた。大学生の息子に対しても自ら学ぶ姿勢を見せることで、コミュニケーションが深まり、新たな道を共に歩むことができた」と述べた。 花香さおり氏は、SEの経験者であり、いまは派遣で一般事務の仕事をしている。SEやブログラマの仕事に再挑戦したいと思っていたが、スキルや環境などを含めて飛び込む自信がなかったという。 「自分の価値を高めてどこでも仕事ができるようになりたいと考えていた。新聞記事で、このプログラムのことを知って参加することを決めた。プロクラムへの参加によって、Microsoft Certified: Azure AI Fundamentals(AI-900)の資格を取得できたことは大きな自信につながった。このままではいい、という考えがなくなり、変わりたいという気持ちに強くなった。ITスキルは、どこででも仕事ができるようなるために必要なものである」と述べた。 戸田和子氏は、中小企業向けのDX支援ビジネスの開業準備を進めており、それに向けてさまざまなスキルの取得に挑んでいる。Code; Without Barriers in Japanも起業に向けた準備のひとつとして活用。生成AIの活用方法や、Azure AIによる実装について学ぶことができたという。 「これまで独学で学んでいたが、それでは苦労も多かった。今回のプログラムでは、Azure AIを利用できるオンラインラボが提供され、実践的な学習ができる点が特徴であり、文系で、アナログの私でもAIサービスが作れる時代がやってきたことを実感できた。AIの民主化を感じている。オフラインの交流会では、自分も変わりたいという女性との対話を通じて勇気をもらった。なりたい自分になるためのプログラムだと感じた」と語った。戸田氏は、「オカンDX」の名称で、中小企業のDX支援を行う考えだという。 新山実奈子氏は、現在、RPAおよびPower Platformのエンジニアとして活躍している。自らが還暦を超えていることを明かしながら、「PCは、Windows3.1の時代から使っている。積極的に学ぶことがキャリアアップにつながる。退職を考える年齢でありながらも、将来の夢を見ることができる」と明るく語る。 そして、「Code; Without Barriers in Japanは、加速装置になる。自分のスキルセットを大幅に向上させることができ、キャリア形成の武器として使える」と述べた。また、「業務を効率化するには、AIは非常に役立つ。学びを通じて得たのはCopilotをやっていないとマズいという危機感。わからないことを何度も聞きなおすということが多いが、それをCopilotが補ってくれる」などと述べた。 Code; Without Barriers in Japan第二期では、サイバーリンク、パーソルテンプスタッフ、ベネッセコーポレーション、Warisの4社が、プログラムパートナーとして新たに参加する。各社が持つオンライン学習コンテンツや就業支援サービス、スキリング、ウェビナーなどとも連携する。 また第二期からは、好きな時間に学習ができるようにオンデマンドで学習コンテンツを配信することで、学習プログラムへの参加を柔軟にする。「家事や仕事で時間に融通が利かない人にも参加してもらいやすくなる。また、いまは海外に住んでいるが、日本に帰ってから、すぐに働きたいという人にも活用してもらえる」と述べた。 なお第一期において、2500人がプログラムを修了しバッジを取得したものの、4500人は修了していないというのも実態だ。これらの参加者については、学習の途中にあるととらえており、第二期にも引き続き参加することができる。オンデマンドによって、より参加しやすくなる環境が整えることで、参加者の増加とともに、修了者も増やしていく考えだ。
クラウド Watch,大河原 克行