不動産投資信託「J-REIT」低迷のワケ…マンションさらに高騰、オフィスも堅調なのにナゼ?
今年3月、日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを実施。それにより懸念されたのが不動産相場への悪影響だが、郊外で価格の下落傾向が見られるものの、都心を中心に高値を維持している。 【写真】パリサー・キャピタルが東京建物の株式1.5%取得 英アクティビストが圧力をかける狙い 不動産経済研究所によると、首都圏(1都3県)の新築分譲マンション平均価格(10月、1戸当たり)は9239万円(前年同月比40.7%上昇)、東京23区は1億2940万円(同48.6%上昇)と大幅上昇。東京都心5区のオフィスビルは空室率が5%を割り、平均賃料も上昇傾向に。 そんな中、東証REIT(不動産投資信託)指数は2021年夏に2200台を付けた後、現在1600台まで低迷。 住宅、オフィス、ホテル、物流など日本の不動産に投資し、賃料収入や物件売却からの収益を投資家に分配するJ-REIT。その中でホテル系はインバウンド復活の影響で年間騰落率上位に位置しているものの、全体では低迷している。この傾向は何を暗示しているのか。 「REITが全体的に低迷している理由はいくつかあります。一つが今後の借入金利上昇が危惧されている点です。平均で総資産の42%を借り入れしているREITは、将来的な利払い増で収益圧迫の懸念があります。一方、賃料収入の値上げは貸主の一存で簡単には決められません」(不動産アナリスト・長谷川高氏) インバウンド要因で好調なホテル系にも懸念材料があるとのこと。 「今後の利上げ度合いによりますが、REIT投資のメインプレーヤーである金融機関や外国人投資家がさらに持ち高を減らすことも考えられます。オフィスビルの空室率低下は都心の大型ビルに限った話で、その半面、中小ビルの空室率は上昇傾向にあります。労働人口減少とテレワークの広がりは大きなマイナス要因です。コロナ禍で好調だった物流も供給増加で空室率が上昇し、賃料上昇にも陰りが見え始めました。復活したホテルも人手不足の影響で稼働率に影響が出ています」(長谷川高氏) 利回り3%程度の都心の実物不動産に比べて、5%程度のREITはさまざまな点で魅力的だ。しかし、明確なマイナス要因も出始め、個人投資家にとっては業績好調な半導体株や高騰するビットコインなどに比べて魅力薄に見えるという。