「マクドナルドが高すぎる!」…ビッグマック「2800円」論争が映し出す、「アメリカ人の悲惨な生活」と大統領選での「怒りの矛先」
不満が「怒り」に変わるとき
民主党の選挙プランナーであるブラッド・バノン氏は6月14日付の米政治サイト「ザ・ヒル」に寄稿し、現状を「米国人は怒り、悲観的になっている」と分析した。 そして、2016年の大統領選挙で共和党のトランプ候補と対決した民主党のヒラリー・クリントン候補が一部有権者の経済的な困窮を無視した一方で、トランプ候補はそれを自分に有利になるよう活用したと指摘し、今回の選挙でバイデン大統領が有権者の痛みを傾聴して認めなければ接戦に勝利できないと示唆した。 筆者の肌感覚としても、多くの米国人有権者の無力感からくる「不満」が「怒り」に変質し始めているように思える。衣食足りて礼節を知ると言うが、バイデン政権はまず困っている有権者の痛みを共有しなければ、選挙の日に怒りの審判を受ける可能性が高い。
「ビッグマックの恨み」の矛先
在任中に株価が上がった、GDPが伸びた、電気自動車(EV)の購入に潤沢な補助金を用意したという「バイデノミクス」のスローガンは、持ち家や金融商品など保有する資産価値が上がり、より裕福になった都市部住民たちにはウケがよいかも知れない。しかし、票田としてバイデン氏が今最も必要とする労働者層の多くには現実味があるものとして感じられない。 ビッグマックのセットメニューが好きな時に家族で楽しめるという庶民のささやかな願いもかなわないなら、多くの有権者はトランプに流れないまでも、棄権したり、白票を投じたり、「第3の候補」に票を投じて、バイデン大統領を罰するのではないだろうか。 なお、6月27日(日本時間28日)には、バイデン氏とトランプ氏による第一回目のテレビ討論会が開催される。 連載記事「「ビッグマック」セットが2800円もするなんて高すぎる…! マクドナルドが火をつけた米「ハンバーガー戦争」の仁義なき戦い」でも、アメリカ人の苦しい懐事情について解説しているので是非、参考としてほしい。
岩田 太郎(在米ジャーナリスト)