物価は日本の5倍、道路では高級車が爆走…移住需要が高まるドバイの「意外な一面」
高級車がゲームのように走る街
このほかにも、ドバイ移住した日本人を圧倒するのは車の運転の荒さだ。 海岸線に平行してドバイを貫き、隣国までつづく「シェイク・ザーイド・ロード」という高速道路は6車線もあり、制限速度は時速140km。どこもかしこも高級車が走っていて、ハンドルを握っているのは運転に自信があるタイプばかり。ゲームのような感覚で車線を自由自在に変え、高速で走り抜けていく。ドバイの主要部を移動するためには、必ずと言っていいほど「シェイク・ザーイド・ロード」を使わなくてはならないため、運転が苦手で慣れない人にとっては耐え難いものだという。 「日々新しいものができているため、『ドバイではグーグルマップが使えない』という笑い話もあります。目まぐるしいスピードで道路ができたり、なくなったりするので、グーグルマップの更新も追いつかないわけです。工事も頻繁に行われていて、通れない箇所だらけ。その意味でも運転するのはかなり難しいでしょう。 このように、ドバイはいわば『大人のディズニーランド』。すべてが豪華でゴージャスにつくられている。新しいものを、しかも信じられないほどのスケールでどんどんつくっていき、飽きさせないようになっている。そこに人は圧倒されるのでしょう。 ただ、しばらく住んでいれば、興奮も冷めてしまう。冷静になると暑くて物価も高いドバイに急速に疲れてしまうという方もいる。新橋や上野、あるいは大阪の下町にあるようなほっこりできる場所がドバイにはないんです」(前出・大森氏)
経済的な「うまみ」も減った
また、宗教的な違いに苦しむ人もいる。ドバイは人口の9割以上が外国人で構成されているが、もともとはイスラム教の国である。海外からの移住者が多いとはいえ、その影響はまだまだ残っているという。前出の宮脇氏が言う。 「ラマダン(断食月)が始まって、スーパーやレストランが閉まってしまったり、祈りによって業務が止まったりすることもあります。 お酒もホテルの中の許可されている飲食店でしか飲めない。居酒屋のような場所で気軽にお酒を飲めないのはイスラム教ならではのことだと思います。 遊歩道で犬の散歩をしていたら、急に『歩かせるな!』と怒鳴られたこともあります。イスラム教では犬は不浄の生き物とされているので仕方ないとはいえ、血相を変えて怒られたのには驚きました。 海外からの移住者が増えて年々グローバル化していると言われますが、それでも宗教上の違いを感じさせられることはあります」 さらに、近年は住みづらさに追い打ちをかけるようなことも起きている。 '18年1月には日本の消費税に当たる付加価値税が、'23年6月には法人税が導入され、最大の移住理由だった税制優遇という「うまみ」がなくなりはじめたのだ。 日本よりはまだまだ税率は低く、やり方によってはビジネスチャンスはあるものの、ドバイで法人を持つメリットは、昔ほどはないと宮脇氏は語る。 カネ持ちの楽園だったはずのドバイからシン富裕層たちが逃げ出す日は近いのかもしれない。 「週刊現代」2024年12月7・14日合併号より
週刊現代、宮脇 さき