900人超が犠牲に、「人民寺院」集団自殺事件とは何だったのか 米カルト教団が招いた惨劇
ユートピアの終わり
しかし、ジョーンズタウンはジム・ジョーンズが約束したようなユートピアではなかった。 グレース・ストーンさんは、ジョーンズタウンが建設される前に人民寺院を離れたが、それでも内部で起こっていたことを伝え聞いていた。「人々がひどい扱いを受けているという話を耳にするようになりました。ジムは、人々の生活を惨めにし、脅したり支配したりしていました」 平等という福音を説いていたはずのジョーンズは、自らをジャングルの王国の支配者にまつり上げた。全員のパスポートを取り上げ、ジョーンズタウンから逃げられないようにした。 誰も、ジョーンズの許可なしに交際したり別れたりすることはできなかった。規則を破った者は村八分にされ、ある証言によると、子どもたちを森のなかの木に縛り付けたり、女性の足にヘビを巻きつけたりしたこともあったという。
惨劇の始まり
ジョーンズの被害妄想はますます悪化し、ジョーンズタウンはいつか軍隊に襲われるだろうと信じ込むようになった。そして、集団自殺だけが唯一の道であると主張し、住人を集めて毒を飲むよう命令した。 ただし、本当に毒が入っていたわけではない。人々の忠誠心を試し、この先起こることに備えさせることが目的だった。 住人たちは、素直に命令に従った。カリフォルニア州にいた頃からこのような自殺訓練を行っていたため、感覚が鈍っていたのかもしれない。 1978年11月18日、ジョーンズはついに、それまで訓練してきたことを実行に移すよう指示した。レオ・ライアン米下院議員がジョーンズタウンを調査訪問した後、ジョーンズは終わりの時がやってきたと判断し、シアン化物入りの飲料を飲むよう信者に迫った。 なかには進んで飲んだ者もいたかもしれないが、多くの人は抵抗すれば殺されると思って仕方なく飲んだのだろう。子どもも含め、強制的に飲まされたり、注射されたりした人もいた。 コミューンに沈黙が降りたとき、900人以上の男女と子どもたちが亡くなっていた。
文=Parissa DJangi/訳=荒井ハンナ