堀田真由が時代に切り込んでいくヒロインに とにかく鋭い『若草物語』の“違和感”の描き方
今後鍵を握るのは、役者を目指す三女の衿(長濱ねる)?
そして、今後鍵になってくるのが、心優しくおっとりとした役者を目指す三女の衿(長濱ねる)の存在だろう。「将来衿のためにドラマを書きたい」と熱く語る涼と、「いつか涼の書いたドラマで主演をやりたい」と夢見る衿。二人の絆は強く、互いの夢を支え合っていた。しかし現在、姉妹が暮らす家に衿の姿はない。その理由は明かされていないが、家族の誰もが気にかけている様子だ。 恋をする人、しない人。夢を追う人、家庭が欲しい人。以前、コラムニストのジェーン・スーが女性の人生の在り方について「結婚する、しない。仕事をする、しない。子どもを産む、産まない。2×2×2で、最低でも8パターンもある」と言及していたことを思い出す。本作がそれぞれタイプの違う姉妹たちを通じて、四者四様の女性の生き方をどう立体的に描いていくのかは、楽しみなところである。 特に堀田真由演じる涼は、恋愛や結婚に対して“丸っと抜け落ちていても”幸せになれるヒロインとして描かれる可能性があり、これは本作の重要なポイントでもある。涼の怒りと正義感を見事に表現した、黒崎に啖呵を切るシーンの演技は大変爽快だった。涼は自身の描く脚本を通して、この恋愛至上主義の世の中に“物申す”存在として成長していくのかもしれない。既存の価値観に疑問を投げかけ、自分の信念を貫く姿は、この令和の『若草物語』がやりたかったことのひとつのようにも思えた。 一方で、涼が再会した幼なじみ・行城律(一ノ瀬颯)の視線や態度からは、涼への単なる幼なじみ以上の感情も垣間見えるからこそ、今後の涼が恋愛に対してどう反応していくのかは気になるところだ。 そして何より、四姉妹が考える「ハッピーエンド」の定義も、それぞれで異なるはず。本作が最終回を迎えるとき、四姉妹の奮闘を通じて、視聴者もまた、自分自身のハッピーエンドについて考えるきっかけを手にしているに違いない。
すなくじら