【M&A】「限定オークション」と「相対取引」はどう違う?2つの売却方式を比較・解説
M&A仲介サービスに多い「相対取引」
一方の相対取引は、有力な買い手候補企業1社を選び、その買い手候補企業と売り手との間で1対1の交渉を進めていくアプローチです。限られた買い手候補企業にのみ情報開示を行うことで情報漏洩のリスクが限定されれば、機密性の高いプロセスといえます。反面、買い手側で競争原理が働かず、売り手が良い条件を勝ち取りにくくなるデメリットがあります。仲介会社が支援する場合などで、買い手自身が1対1で交渉しているのを認識している場合には、買い手に足元を見られるリスクもあるでしょう。 M&A仲介会社にとっては、手数料を払ってくれる買い手に十分な投資案件機会を提供することも重要な仕事です。そのため、相対取引の構造で交渉を進めていくケースが多く存在し、買い手を1社紹介して、進まなければもう1社紹介するといったアプローチになりがちです。売り手オーナーからするとその候補先が最善の相手であると納得しづらく、意思決定で悩む側面があります。紹介された買い手候補の1社目で決まれば最短3ヵ月といった短期間での事業売却も可能ですが、1社目ではダメでもう1社、またダメでもう1社…というように、マッチング回数が増えるほど、全体の事業売却プロセスとして時間を要してしまうデメリットもあります。 M&A業者が短期間での成約を優先する場合、他の買い手候補の可能性を追求せずに、交渉中の買い手以外に選択肢がないかのような説明を行うケースもあります。売り手オーナーとしては、M&A業者が十分な買い手候補企業の分析・提案を行なっているかどうか、慎重な判断が必要です。 作田 隆吉 オーナーズ株式会社 代表取締役社長
作田 隆吉