正月彩る農産物の今 飾りのダイダイ プラスチック製代用品が増加…
稲葉さんによると、ダイダイは他のかんきつに比べて管理作業の負担が少ないが、やはり高所作業での収穫は苦労している。それでも「ダイダイがなくなってしまうのは、やはりさびしい」との思いで栽培を続けている。 全国規模で見ても、ダイダイの出荷量は、じわじわと減ってきている。農水省の統計によると、加工用を除く出荷量は最新の2021年時点で421トン。10年間で45%減った。 東京都内の青果卸に、近年のダイダイの入荷状況を聞いてみた。ある卸のせり人は「ひっ迫感が強い」と強調。関東で出回るのは主に静岡産と和歌山産だが、入荷が減っているという。「縁起物で欠品が許される品目ではない。悩んでいる」と明かす。 そのせり人によると、近年は鏡餅向けの注文はほぼなく、玄関飾り向けの注文が需要の大半を占める。「品薄が続くと、玄関飾りでも他のかんきつを使うような流れになりかねない」と指摘する。
農家の手取り少なく…
JAには毎年、玄関飾りなどに使うダイダイの注文が届く。管内の作付面積は8ヘクタールあるが、収穫できない農家も多く、実際に稼働しているのは4ヘクタール程度という。 食用ではないダイダイは他のかんきつ類と比べて価格が低い。その上、着果量が少ない性質があって収量が伸びにくく「農家の手取りは食用かんきつ類の半分以下」(同センター)。需要があっても増産する状況にはなりにくいという。 それでもJAは「収穫する人がいる限り、ダイダイの出荷は続ける」考え。業者と事前契約した数量を守るため、「職員が収穫を担うこともある」(同センター)。伝統作物を残したい農家と、その農家を支えるJAによって、かろうじて生産が維持されていた。
日本農業新聞