『【推しの子】』アイ、一夜限りの復活祭! 横槍メンゴさん『【推しの子】』と駆け抜けた4年半
2024年11月に『週刊ヤングジャンプ』で最終回を迎えた『【推しの子】』。作画担当の横槍メンゴさんが対峙した制作過程での苦しみや喜びとは。連載を通して追求した"絵で作品を表現すること"について語り尽くす 【写真】『【推しの子】』アイ、横槍メンゴさんの描き下ろしイラストをもっと見る
パフスリーブにプリーツなどシックな要素を盛り込んだブラックドレスを、シアーなドットの襟でレトロなムードに。パールネックレスの大ぶりな花が首もとに輝く。シルク素材のターバンとのミスマッチが、唯一無二のスタイリングを生み出した。"B小町のアイ"とはひと味違った趣のある装いが、彼女の新たな表情を引き出す。 ドレス¥753,500・ソックス(参考商品)(ともにヴァレンティノ)・イヤリング¥319,000・左耳につけたイヤリング¥110,000・ネックレス¥572,000・同 ¥189,200・同 (参考商品)・バッグ〈H12×W19×D6〉¥422,400・ターバン¥199,100・靴(参考商品)(すべてヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク アーティスト・俳優。 アイ 芸能事務所「苺プロダクション」所属。アイドルグループ「B小町」のセンターを務める。メンバーカラーは赤。映像作品にも多数出演し、存在感を放っている。
『【推しの子】』が持つ不思議な引力にのまれないよう必死だった
2020年春の連載スタートから約4年半。世界が固唾をのんで見守るなか、『【推しの子】』が第166話をもって完結! 赤坂アカさんとタッグを組み、作画を手がけた横槍メンゴさんが、SPURのためにスペシャルなイラストを描き下ろした。 「前回のジュエリーを身につけたルビー&アクアに続いて、今回は〈ヴァレンティノ〉の最新ルックを着こなすアイちゃんです! アイドル全盛期を経て少し年を重ねた彼女が、もしもファッションショーのゲストに呼ばれたら……と想像してSFでいうところの"イフの世界"を描いてみました」 「暗闇に光を照らす為に生まれてきた」という言葉の通り、アイドルのきらめきを全身にまとうアイ。『【推しの子】』もまた、何年後、何十年後、もしかしたら何百年後の未来にまで届くほどの光を放つ作品になった。 「連載前の準備から終了まで、文字通り駆け抜けた5年間でした。たくさんの人に読んでもらえてうれしい、という気持ちがある半面、想像以上に幅広い範囲の読者に届いたことによるプレッシャーはすさまじかった! 自分で描いておいてこんなことを言うのもなんですが『【推しの子】』って不思議な引力のある作品だと思っていて、その磁場の強さに引きずり込まれないよう必死でした。アカ先生もきっと同じ思いだったんじゃないかな」 漫画もアニメも記録的な大ヒットを飛ばし、SNSのトレンドで『【推しの子】』や登場人物の名前を目にすることも多かった。 「アカ先生とは頻繁にやりとりしてアイデアも出し合いましたが、私は作画に徹することを当初から決めていました。だからアカ先生が何を出してきても、毎週届くネームがどんな内容であっても、最後まで信用して描き切ろうと考えていました。連載を通して絵に集中することができたのはありがたかったし、連載の終盤は月2~3回と掲載ペースが少し緩やかになって、ネームにも作画にも時間をかけられたのがよかったです」 転生から始まる物語の設定に加えて、主要キャラたちの"演技"によって、一人の人間のなかにいくつもの人格が往来する。特に第9章映画編の重層性と、漫画ならではの表現の凄みに驚かされる。 「映画編で特に難しかったのは、ルビーがアイを憑依させて、アイにしか見えないけどアイではない、という場面の絵作りですね。頭で考えたことを技術で具現化するだけでは追いつけないところがあったので、役者がキャラに入るようなイメージで描き出していきました。アクアがカミキヒカルを演じる場面なら、瞳の表現に変化をつけたりしつつ、あくまでアクアの解釈による"演技"を描くことを意識。描いていてつくづく思ったのは、第5章で2.5次元舞台編を描いていてよかった、ということ。これがいきなり映画編だったらパニックになってしまったんじゃないかな」 ルビーには前世のさりなの記憶と人格があり、アクアの中にはゴローがいる。人の意識と記憶と時間が幾層にも重なり、漫画でなければ実現不可能な表現が連打される。 「映画編のルビーとアクアの演技のターンは描くのがとても楽しくて、ずっと描いていたいくらいでした。この物語はアイちゃんとカミキくんから始まったけど、二人が幸せだった頃の描写って物語の終盤にいかないと出せないところでもあったので。やっとここまでたどり着いたんだ!という達成感もあって、私にとってはご褒美回。一方でシリアスで恐ろしい表情って、しんどさもあるけど絵を描くという意味では楽しいんです。表現においては自分の未熟さを感じることも多かったけど、今持っている力は出し切れました。物語の結末は決まっていたし、自分が表現力を磨かなければとても描き切れないというのはわかっていたので、細かな技術や画力うんぬんより、最後は表現力で勝負だ!と」