【法律相談】「隣家の庭から放たれる野外照明が眩しすぎる…」“光害”防止のための規制はないのか、弁護士が解説
騒音や振動などの生活公害には法的規制が設けられているが、照明などによる「光害」にはどのような規制があるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 私の家は避暑地にあるのですが、夜になると隣家の別荘の庭から放たれる野外照明の光が眩しく、まさに“光害”にさらされ困っています。今では、その強烈な光のせいで夜でも部屋のカーテンは閉めっぱなし。星空も楽しめません。このような景観をも壊す別荘の照明を止めるには、どうすればよいですか。 【回答】 光害(ひかりがい)とは、「照明の設置方法や配光が不適切で、景観や周辺環境への配慮が不十分なために起こるさまざまな影響」(環境省ホームページ)です。環境省は、快適で良好な光環境を実現するよう光害対策ガイドライン(GL)を公表していますが、法律による規制はありません。それでも、光害防止が喫緊の課題となっている自治体では、独自の条例があります。 長野県では、「良好な生活環境の保全に関する条例」で「照明器具から照射される光の量又は方向により、不快感、信号等の重要情報の認知力の低下など人の活動、人の生活に密接な関係のある動植物又は星空環境(星空の観測に適した、暗い夜空が広がる環境)に悪影響が生ずること」を光害と定義し、屋外で照明器具を使用するときは、その目的を阻害しない範囲で光量を必要最低限にするなどの措置を講じ、光害が生じないように努める義務を課していますが、これもまた、罰則はありません。
ただし、サーチライトで他人の所有物を照らすようなことをしたときは、知事が停止の勧告を出し、従わなければ停止を命じることができ、この命令に従わないと、過料の制裁を受けます。 他にも、天文台がある岡山県井原市美星町の光害防止条例では、例えば屋外照明は水平以上に光が漏れないようにするなどの配光基準を定め、基準に適合しない照明に対して改善措置を命じ、従わないときは、氏名の公表という事実上の制裁手段を講じています。 こうした条例がない場合でも、GLに反する照明がされたことにより、快適な生活を著しく妨げられたら、不法行為になるとともに、人格権の侵害として過度な照明の中止を請求することも理屈の上ではあり得ますが、法的規制のある騒音や振動などの生活公害と比べると、ハードルは高いといえます。 【プロフィール】 竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 ※週刊ポスト2024年11月8・15日号