日本代表も競技断念→18歳で中日チア「もう大混乱」 母になった“伝説メンバー”の今
現在は子育てに奮闘「思った以上に大変! でも、思った以上に可愛い」
「なんかこれ、いいんじゃない? 応募してみていい?」 すすめられたのは、チアドラのオーディションだった。大のドラゴンズファンの父が、ダンスが好きな娘のためにひねり出した親心。「私が悩んでいるのを察してくれて、きっかけをくれようとしたんだと思います」。思いを受け取り、合格。2010年春から短大生とチアドラの二足のわらじを履いた。 華やかなプロ野球の世界、ドームを盛り上げる大役、ファンとの交流……。世界が一変した。「混乱。もう大混乱。すべてがカルチャーショックのような感じでした」。重圧がのしかかる新体操の試合で勝つ喜びとは違った魅力が、チアにはあった。「空間を盛り上げる。お客さんと一緒に楽しむ」。パフォーマンスだけでなく、メディアへの取材対応やイベント出演と忙しかった。 新体操に関わり続けていても、充実した日々だったかもしれない。でも、18歳で迎えた転換点が社会との接点を増やし、視野を広げてくれたのは確か。「ひとつのことをするのに、裏でこれだけ人が動いて準備してくれているんだということにも気付けました」。チア引退後は、球団スタッフに転身。チケット販売やグッズ制作などに携わった。 2018年に結婚。いまは子育てに奮闘する毎日。「子どもの世話って思った以上に大変! でも、思った以上に可愛くて(笑)」。ふと、柔らかなママの顔がのぞく。 当時のチアドラメンバーたちとは、今でも交流がある。今回、OB戦に合わせて球団職員から声がかかり「踊れるか不安でしたけど、みんなと同窓会するような気持ちで参加しました」。大事に保管していた当時の衣装を難なく着こなし、スタンドの観客に笑顔を届けた。 刺激的だった日々の思い出が、鮮明に蘇った一夜。「もう本当に貴重な経験をさせてもらった4年間だったなって、あらためて思います」。最後に写真撮影をお願いすると、本多さんは少しはにかみながらも抜群のスマイルを決め、背筋正しくポーズを決めた。チアの品格は、いつまでも息づいている。
小西亮 / Ryo Konishi