新興国の公社債、ハードカレンシー建て発行鈍化へ-政治リスク念頭
(ブルームバーグ): 新興国市場でのハードカレンシー建ての公社債発行はこの半年間に大きく膨らんだが、政治リスクをはらんだ7-12月(下期)に急減速しそうだ。
ブルームバーグがまとめたデータによると、新興国市場の政府および企業による債券発行額は、2021年以降で1-6月(上期)としては最も多い3210億ドル(約51兆6700億円)達した。
それでも、JPモルガン・チェースとバンク・オブ・アメリカ(BofA)の予測によれば、年初に借り手が資金需要を満たそうと急いだため、年内の発行額は例年以上に鈍化する見通しだ。
フランスからボリビアに至る各国政府が厳しい政治状況に直面する中、6月27日の米大統領選討論会では11月の大統領選に向けた混迷がより鮮明になり、アナリストは新興国市場の発行体を寄せ付けないような世界的なボラティリティーの高まりを警告している。
JPモルガンの中東欧・中東・アフリカ債シンジケート責任者アレクサンダー・カロレフ氏は、「24年の資金需要という点では恐らく80%はすでに終わっている」と指摘し、「これまでのような発行額は持続可能ではない」と語った。
債券の入札は7-12月期に先細りになるのが一般的だが、今年は特にスタートが早く、多くのフロンティア発行体の市場アクセスが再開され、利回りも魅力的だったため、23年1-6月期と比べ発行額が32%急増し、17年以来最大の伸びとなった。
借り手の中では、サウジアラビアが約350億ドルと、中国を抜いて最も多く発行。サハラ以南のアフリカ諸国が発行したグローバル債は23年7-12月期のゼロから110億ドルに増加し、中南米の大国ブラジルとメキシコは今年1月だけで計120億ドルのドル建て債を発行した。
社債も回復しており、ユーロ債とドル債の発行額は23年の1080億ドルから1680億ドルに増加した。
それでも、市場の活況とリターン上昇は一致していない。米国の利下げ観測が後退し利回りが急上昇したことと、インドやメキシコなどの政治を巡る懸念により、新興国のドル建て債のリターンは今年プラス2.5%に低下。前年同期はプラス3.4%だった。