『アレック・ソス 部屋についての部屋』」東京都写真美術館【青野尚子のアート散歩】
「部屋」をテーマにアレック・ソスの写真を読む。
国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材にした写真などで知られるアレック・ソス。東京都写真美術館で開かれる個展では初期から最新作まで約60点の作品を見せる。
ソスは初期からアメリカ国内を車で旅行し、その先々で出会った人々や風景を大判カメラで写したロードトリップのスタイルで知られている。 その一方でこの展覧会にも出品される「I Know How Furiously Your Heart is Beating」というシリーズでは世界中でさまざまな人々を訪ね、その人が暮らす部屋の中で撮影してきた。舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリンや小説家のハニヤ・ヤナギハラらの自室は彼らが愛するもので満ちていて、モデルとなった人々も表向きのものとは違う顔を見せる。
このシリーズがきっかけになって、今回の個展では「部屋」をテーマにソスの写真を編み直した。ソス自身は「ポートレートや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」という。 会場には初期のカラー作品、ソスが影響を受けた写真家たちのポートレイトなどこれまでの作品のほか、アメリカの美術学校を舞台に撮影された最新のシリーズ「Advice for Young Artists」までが並ぶ。彼の写真には人々への好奇心と優しさが漂う。私たちからは遠く離れた地に住む人々にも親近感がわいてくる。
アレック・ソスは1969年、アメリカ中西部のミネアポリス生まれ。2022年に神奈川県立近代美術館 葉山で開かれた個展にも多くの人が訪れた。 『アレック・ソス 部屋についての部屋』 10月10日(木)~2025年1月19日(日) ●東京都写真美術館(東京都目黒区三田1・13・3 恵比寿ガーデンプレイス内) TEL.03・3280・0099 10時~18時 月曜休(月曜が祝休日の場合は翌平日休)、年末年始休 観覧料一般800円ほか