「ザボディショップ」が欧米で破綻 再起の可能性は? 日本は英国本国と資本関係のないFC経営
その後ロレアルは2017年、ブラジルの化粧品大手ナチュラ&コー(NATURA & CO.以下、ナチュラ)に「ザボディショップ」を11億ドル(約1694億円)の評価額で売却。ナチュラは組織と収益性に問題を抱えていたため、「ザボディショップ」の運営に手が回らず、23年にアウレリウスに同ブランドを2億5400万ドル(約391億1600万円)で売却した。
バーミンガム・ビジネス・スクールでリテール・マーケティングの教授を務めるセーラ・モンターノ(Sarah Montano)は、かつての顧客は「ザボディショップ」の商品とミッションに投資していたと分析する。「アニータ・ロディック自身がブランドだと信じていた顧客は、彼女の理念を支援することを望んでいた。ロレアルなどの大手企業にお金を払う気はなかったのでは?」と話す。初期の「ザボディショップ」でロディックと共に働いた経験を持つマーク・コンスタンティン(Mark Constantine)=「ラッシュ(LUSH)」共同設立者兼最高経営責任者(CEO)は、「『ザボディショップ』は理念が全てだ。売買されたらうまくいかない。家族経営と従業員所有を組み合わせるべきだったのではないか」と述べる。
度重なる売買によって創設者の理念は薄れていった
ロディックがロレアルに仕掛けた“トロイの木馬”作戦はいくらか成功した。ロレアルは、実験用表皮モデル“エピスキン(EPISKIN)”の開発によって動物実験を廃止する取り組みを強化したほか、調達モデルを改善し、ロディックが支援してきた数々のフェアトレード施策も前進した。しかし元従業員によると、ロレアルと「ザボディショップ」の文化は全く融合しなかったという。ロレアルはブランドオーナーであり、小売業者ではなかった。一方で「ザボディショップ」は、小売業を生業とする会社だった。そして競合他社がサステナビリティを重視するようになると、「ザボディショップ」の個性は見えづらくなっていく。