役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。今回は、2024年12月6日公開の映画『大きな家』を取り上げる。

ある日、齊藤さんから届いたオンライン試写。

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齊藤工さんが企画・プロデュースされたドキュメンタリー映画『大きな家』。とある児童養護施設。親元を離れて暮らす子供たちの日々を収めています。監督を務めるのは、前作のドキュメンタリー映画『14歳の栞』でも中学2年生の赤裸々な言動を巧みに導きだした竹林亮監督。 個々で話すと面白い感性の子たちが、学校という場では自分を殺し、仮面をつけて、集団生活をやりすごそうとしている姿に考えさせられたり、自分の子も学校ではこういう感じなのかと他人事でなかったり。改めて、彼らは彼らの社会のなかで、自分の居場所を必死に探しているんだなと思い、いちいち口を出さず、見守るのが親の役目だと痛感しました。 一方、今作の子供たちは、親と離れて暮らす自分の状況を冷静に見ているように感じます。本音をカメラの前で語っている。子供たちを見守る施設の大人たちの眼差しの温かさ、日々を心配する姿勢は、ある意味、親と言い換えてもいいほどの愛情に溢れている。なんなら、仕事と植物ばかりの滝藤なんかより、よっぽど子供と関わり、彼らの将来を考えている。 いろんな事情があるにせよ、施設に面会に来ない親。自分に会いたくないのかもと自問自答し、イラ立ち、悔しがり、悲しみながらも、最後はきっと急用ができたんだと親を責めることなく自分を納得させる。何かを諦めたかのような彼らの眼差しを見ると、未発達の小さな心がいつ壊れてしまうのかと胸が締めつけられる。常日頃から子供たちと接している親代わりの職員たちからすれば、やるせない気持ちでいっぱいだろうと想像させられます。 自分のことを何年間にもわたって見守ってきた女性職員を「単なるおばさん」と言いながら濃厚な関係性を築く子。大学で陸上選手として活躍し、自己記録に挑む青年、役者を目指し日々トレーニングする子。今の滝藤に何ができるのかわからないが、彼らが同じ世界で同じように葛藤し、悩み、楽しんで生きていることを知ることができてよかったと切に思う。このドキュメンタリー映画に出会えたことに感謝です。 『大きな家』 東京のとある児童養護施設を舞台に、親と離れて暮らす子供たちと職員の日常や自立目前の子供の本音を記録した作品。単館から、全国45都市まで拡大した映画『14歳の栞』の竹林亮が監督・編集を務めた。子供たちのプライバシーを重視した作りにも注目したい。 2024／日本 監督：竹林 亮 配給：パルコ 2024年12月6日よりホワイト シネクイント、TOHOシネマズ 梅田、センチュリーシネマにて先行公開。2024年12月20日より全国順次公開 滝藤賢一／Kenichi Takitoh 1976年愛知県生まれ。2024年12月27日より映画『私にふさわしいホテル』が公開。2025年1月からドラマ『TRUE COLORS（トゥルー カラーズ）』（NHK BSプレミアム4K＆BS）全9回が開始。