[新政権の宿題]IGPI冨山和彦氏「今の労働規制では大谷翔平は生まれない」
規制改革でイノベーション促進
働き方を選べるようにするということですか。 冨山氏:2040年に日本では働き手が1100万人余り不足するといわれており、誰も経験したことがない壮絶な人手不足社会となります。労働供給は制約され、着実に労使の力関係が労働者優位へと移っていきます。そうなった際に、働き方を選べることが重要になります。 例えば、最近はタイミーなどが仲介するスポットワークも一般的になり、昔と比べて自発的に非正規雇用を選ぶ人も増えていますよね。ホワイトカラー・エグゼンプションをはじめ、労働者側の働き方の選択肢を増やすということはとても大事だと思います。 今後は日本発のメガベンチャー創出も期待されます。イノベーションで世界をリードするベンチャー育成に向けて、政府に何を期待しますか。 冨山氏:規制改革は重要なポイントになると考えます。ベンチャー企業が立ち上がる際には、どうしてもその会社の事業を試す環境の有無が問われます。事業を試すプラットフォームに関しては、現状、米国が圧倒的に強いです。 例えば、米国では自動運転タクシー(ロボットタクシー)の実証実験を行っており、すでに数百台が日常的に走っています。やはり実装しないと、技術は進化していかないものです。 このような話をするとすぐに緩和か規制強化かという二項対立の議論が始められがちですが、そうではありません。単純に規制緩和につなげるというわけではなくて、条件設定を通して規制をいかにうまくデザインするかが重要です。証拠に基づく政策立案(EBPM)の考え方に即した規制改革を実施すべきです。 世界の動きをキャッチアップしていく必要がありますね。 その意味でグローバルプラクティス(諸外国で広く実践されている取り組み)の導入を進める必要があります。グローバルに飛躍する上では、ガバナンス(統治)や人権問題などに対する日本独自のローカルなプラクティスを世界標準に合わせる必要があります。 これはベンチャーキャピタル(VC)や投資家といった当事者の問題ではありますが、政府がある程度サポートしたほうがいいかもしれません。
齋藤 英香