WS前日、園田通訳とインタビューに対応する山本由伸（阿部太郎撮影）

◇「番記者コラム」 　ドジャースの山本由伸投手の優しさがつまった発言だった。ワールドシリーズ前日の「メディアデー」での会見。横に座って、苦楽を共にした園田芳大通訳への思いを聞いた。 　山本は短髪に刈り込んで大舞台に臨む通訳の横顔を見ながら、あふれる思いが口をついた。「お互い、こっちにきてルーキーというか…。園田さんは特に違う業界から入ってきたので苦労とか、たくさんあったと思う。でも、あまりそういう姿を見せることなく…。園田さんにとってはすごい1年。ワールドシリーズまできて、最後泣かせたいなと（笑）」。 　「泣かせたい－」。冗談めかして言ったが、山本にとっては本心だろう。「いてほしい時にいない男」と園田通訳をいじることもあるが、園田通訳の努力、献身さを山本は誰よりも知っている。園田通訳は映画業界からの転身。英語が分かっても野球用語が分からず、今でも悩む日々が続く。 　園田通訳からも山本への熱い気持ちがほとぼしる。韓国でのパドレスとの開幕シリーズで山本が打ち込まれると、その後、ひげをそる日を当日から、前日に変えた。シーズンで、山本が好投して勝ったパンツは、「勝負パンツ」として履くなどゲンを担ぎまくった。 　「米国の国立公園のプリントが入ったパンツがいいんです。勝つんです」。シーズン中、園田通訳は屈託のない表情でこう語ったこともある。右肩の故障で離脱するなど難しい時期も過ごしたが、山本にいつも感謝していた。「本当、僕は選手に恵まれました。こんなに幸せで、こんなにいい環境でいいのかなって思うんです」。 　同じ「ルーキー」としてドジャースに入った2人。山本は快投して、ワールドチャンピオンを「相棒」にプレゼントするつもりだ。そのために、園田通訳は全力で山本を、チームをサポートする。（阿部太郎）