「女性主人公」の警察ドラマがいま増えるのはなぜ 演技力に定評 松岡茉優『ギークス』と小芝風花『GO HOME』
5月には、『あぶない刑事』シリーズの最新劇場版第8作となる『帰ってきた あぶない刑事』が公開され、ヒットした。また『踊る大捜査線』シリーズも、柳葉敏郎演じる室井慎次を主人公とする映画版による再始動が発表され、ファンを大いに喜ばせた。 さらには『古畑任三郎』シリーズも放送開始から今年がちょうど30周年。関東地区限定ではあるが一挙再放送が始まり、SNSなどでもかなりの反響を呼んだ。 それぞれ作風は異なるが、いずれも事件の解明から真犯人逮捕という刑事ドラマの基本フォーマットに忠実という意味では変わらない。王道パターンは、時代を超えて受け継がれるということだろう。
だがそのフォーマットに従っている限り、新鮮味を出すことはなかなか難しい。まったくの新しい作品ではなく、かつての名作が揃って注目を浴びている現実からは、そんなことも考えさせられる。それだけ歴史を重ね、刑事ドラマも転換期を迎えているというところかもしれない。 ■警察・刑事ドラマの転換期のなかで そのなかで『ギークス』と『GO HOME』は、警察ドラマや刑事ドラマの新しい方向性を模索した試みのように見える。
単なる奇をてらった変化球ではない。1990年代『踊る大捜査線』をきっかけに始まった刑事ドラマの警察ドラマ化という大きな流れを踏まえつつ、いまの時代に合った警察ドラマをつくろうという意図が見て取れる。刑事という存在も、そのなかで新たな立ち位置が見つかるのかもしれない。 演技力に定評のある松岡茉優と小芝風花をそれぞれ主演に配したのも、そう考えれば合点がいく。 刑事や犯人ばかりに焦点を当てた人間ドラマではなく、警察という職場に働く普通の人たちの人間ドラマに新しい鉱脈はあるのか? そんなチャレンジに相応しい、力量確かな2人であるだけに、期待が高まる。
太田 省一 :社会学者、文筆家